JR山手貨物線における作業員5名死亡という重大労災事故に関する「見解」

1.2月21日深夜、山手貨物線の五反田・目黒間の線路上で、夜間作業の現場に向かう途中、後ろから来た臨時回送列車にはねられ、作業員5名が死亡するといういたましい 事故が発生した。私たちは、まず、尊い命を奪われた犠牲者のご冥福をお祈りするとともに、ご遺族のみなさんに心からお悔やみを申し上げ、このような犠牲者を二度と出さないよう全力を尽くす決意を表明するものである。              

2.私たちは、今回の事故が報道されたとき真っ先に頭に浮かんだのは、昨年1月に発生した除雪作業中の4名の作業員が列車にはねられ死亡した青森の事故であった。 「またか」という憤りであり、「おかしいぞ!JR」という感を禁じ得ない。国労の発表した「コメント」では、JR発足から10年間にJR社員が42名、下請け会社の作業員が168名も犠牲になっていることが指摘されている。こんどこそ、通り一遍の「安全対策」ですますことは絶対に許されない。私たちは、国労はじめ関係団体と密接な連携をはかり、JRはじめ関係省庁に徹底した原因究明と抜本的な安全対策を強く求めて いく。

3.JRにとどまらず同様の事故が多発している事実も見逃すことはできない。98年3月には、営団地下鉄千代田線で代々木上原駅付近の夜間工事に向かう途中の3名が最終の回送電車に接触し、死亡する事故が発生した。同様事故が6年間に4件発生し、6名が犠牲になっている。また、NTT関連でも死亡事故が多発しており、96年に12名、97年は半ばで6名という事態に、当時、通信労組が「緊急要求書」を提出してNTTの責任と負担による安全対策を要求した経過もある。これらの事実は、「協力会社」という名の二次・三次下請けに働く労働者にすべての犠牲がおしつけられている構造があることを意味しており、ここにこそメスを入れなければ真の安全対策は確立しないことを強く指摘しておきたい。この立場から労働省等関係機関は直ちに「安全総点検」を実施すべきである。                        

4.規制緩和・リストラによって「コストダウン」のみが最優先され、「安全無視」が助長されている事態は重視しなければならない。不況の深刻化による産業動向等も反映して、統計上は「死亡事故」が減少しているようにみえるが、実際上は急増する危険性が拡大しており、いつ顕在化するか分からない事態にあると考えるべきである。  

   この視点から私たちは、政府に対し、近く国会に提出される「労安法改正」法案の審議および今後の「派遣法」等関連法案審議をつうじ、法制度の充実と厳しい監督行政を求めるものである。そして、働くものの健康と安全を守るたたかいの伝統をひき継ぎ設立された「全国センター」としての役割と責任を自覚し、今回のJR労災事故の教訓を生かして労災事故防止に対処する決意である。                
1999年3月3日
働くもののいのちと健康を守る全国センター
第2回常任理事会