2003年12月6日

特別決議 「労災補償を破壊する労災保険の民営化に反対」

働くもののいのちと健康を守る全国センター
第6回総会

 政府の総合規制改革会議(議長:宮内オリックス会長)は、本年3月28日に閣議決定した「規制改革推進3か年計画」にもとづき労災保険制度の民営化を重点検討事項に入れ、年内にも最終答申を予定している。
 総合規制改革会議は民営化の根拠として、@保険収支が黒字のため給付水準や対象範囲が類似の社会保障給付を上回っていること、A強制適用にもかかわらず60万弱の保険未成立事業所が存在すること、B保険未成立事業者の故意・重過失事故のペナルティが厳格に運用されていないこと、C適正な保険料設定がなされていないこと、D労働福祉事業の目的から逸脱する未払い賃金立替事業や労災病院への出資金などを出している。
 さらに、改革会議は改革の方向性として、@労災保険は自動車損害賠償責任保険と同質な制度であり民間保険会社に委ねることで競争を通じた業務の効率化とサービス向上を図ること、A労働基準監督の職権による未届事業所の一掃、B業種リスクに応じた適正な料率の設定、C労働福祉事業の原則廃止を掲げている。
 そもそも労災保険制度は、罰則をもって強制される労働基準法上の「労働者の業務上負傷、疾病に対する使用者の無過失賠償責任」を実効あるものにするために創設されたものである。また、労災保険は、未手続き事業所への強制適用や保険料未納事業所への滞納処分をともなう政府管掌の強制保険により保険料をプールすることで、すべての被災労働者・遺族への補償を実現させてきたものである。
 改革会議の「労災保険制度改革の方向性」には、根拠をもった民営化のスキームやメリットは示されていない。そこには、民間保険への市場開放を前提に、給付水準の切り下げや切り捨て、労働福祉事業の廃止、保険料率低減のねらいがある。労災保険の民営化を突破口にした他の労働・社会保険制度の民営化も危惧される。
 不幸にして労働災害や職業病に罹患し、労働能力を喪失・停止せざるを得ない被災労働者および遺族の生活や治療、リハビリ・職場復帰を支える労働者保護制度としての労災保険は、手厚く補償されるべきである。すべての被災労働者・遺族への補償は、強制保険による保険料のプールによってこそ実現される。利益を企図する民間保険会社の競争は、限りない給付制限や切り捨てをもたらす。さらに、未契約事業所の労災・職業病が救済されない危険性すらはらんでいる。
 私たち全国センターは、国の責任による労働者保護制度の根幹にかかわる労災保険制度の民営化に断固反対し、働くもののいのちと健康を守る労働者・国民の共同行動を発展させるため全力をあげるものである。