2002年4月15日

(談 話)職場で「VDT労働衛生新指針」の活用を

働くもののいのちと健康を守る全国センター事務局次長(VDT労働衛生プロジェクト担当) 佐々木 昭三

 

 厚生労働省は、4月5日「VDT作業における労働衛生管理のためのガイドライン」(VDT労働衛生新指針、以下新指針)を発表し、都道府県労働局長宛に基発0405001号として通達しました。
 全国センターは、この間研究者、専門家、労働組合・地方センター労働安全衛生担当者などで「VDT労働衛生基準プロジェクト」をつくり、労働者・労働組合、働くものの立場で意見・要求をまとめ上げ、厚生労働省に、「VDT労働衛生基準に関する要望書」を提出し、2回にわたり、交渉と懇談をすすめてきました。今回の新指針はその「要望書」の内容を一定反映した内容になっています。
 2月に「VDT作業に係わる労働衛生管理に関する検討会報告書」が出された段階で、事務局長談話で全国センターとしての見解を発表しました(通信36号参照)。しかし、この報告書を受けて、当初年度内(3月)に新指針が出される予定でしたが、それが出ない重大な問題が生じ、全国センターの要請を受けた日本共産党八田ひろ子参議院議員(決算委員会、総務委員会)の努力などでこの度4月早々に出されたものです。
 この新指針は、見解でも明らかにしたように、職場で活用できる積極的な内容をもっています。それは、対象となるVDT作業労働者を事務所のVDT作業だけでなく、それ以外の場所や在宅ワークを入れ、就業や雇用の形態にかかわりなく正社員、パート、臨時、派遣労働者などをすべての労働者を対象にしたことや高齢者、障害者への特別の配慮が示されていることです。それに、事業主の責任として、労働安全衛生基本方針を明確にした上で、安全衛生計画の策定、作業環境管理、作業管理などの労働衛生管理体制の確立とその実行を明示しています。また、労働(安全)衛生教育、健康診断、事後処置について系統だった制度と体制をも明記しています。
 それから、新指針を「労働安全衛生マネジメントシステム」(労働者参加、安全衛生委員会での<労使>協議、国際労働安全衛生基準準拠)と「事務所衛生基準規則」(この規則を最低基準として)を関連させて明示しており、最近の労働衛生、人間工学の学会などの研究成果である知見を反映したものとなっています。
 しかし、まだ問題点、課題も多くあり、今後職場から出されてくる要望・意見をふまえ、必要の応じて問題点を改正、改善していく必要があります。
 この新指針は、VDT作業労働者が健康を守りながら作業することを目的としており、事業主の労働安全衛生体制の確立の責任を明確にして、常に(安全)衛生委員会で協議し、労働者参加ですすめることになっています。それに新指針の内容には、労働者の健康を守る調査・研究の知見を反映し、国際労働衛生基準もふまえたものになっています。
 新指針の具体的内容は、以上のことをふまえて、対象VDT作業と対象作業労働者、作業環境管理、作業管理―1日の作業時間、―連続作業時間及び作業休止期間、業務量への配慮、作業管理―VDT機器、健康管理、健康診断結果の事後措置、健康相談、労働衛生教育、配慮事項などの基準が詳細に明示され、VDT作業労働の労働衛生基準になっています。
 しかし、この新指針を職場で健康を守りながら働くために、生かすことができるかどうかは、私たち労働者、労働組合、労働(安全)衛生委員会などの積極面を活用した主体的な活動如何にかかっています。(参考:拙稿「VDT労働衛生管理の新指針と職場での活用」『労働と医学』73号 東京社会医学研究センター)