2002年3月12日

(談 話)「VDT作業に係わる労働衛生管理に関する検討会報告書」について

働くもののいのちと健康を守る全国センター事務局長 池田 寛

 

 「VDT作業に係わる労働衛生管理に関する検討会報告書」(以下「報告書」)が、2001年2月21日の第1回検討会以降、5回の検討会を重ねる中でまとめられた。
 1985年2月に「VDT作業のための労働衛生上の指針」が出されてからすでに17年の歳月が経過しており、報告書でも述べているようにこの間のVDT作業をめぐる特徴は、その作業従事者の増大においても、ノート型の普及、多様なソフトウェアの普及、そして携帯情報端末の普及などにおいても隔世の感を禁じ得ない。同時にVDT作業従事者の36.3%が精神的疲労を、77.6%が身体的疲労を訴えている今日、まさにVDT作業に係わる労働衛生管理の基準をつくることは、労働者ばかりでなく国民的視点からも必要性が指摘されていた。
 報告書がその目的として上記のようなこの間の変化に対応しつつ、@作業者の心身負担の軽減、AVDT作業が支障なく行われるような適正な作業管理、健康管理の必要性を位置付けたことに対し私たちも強く共感を覚えるところであり、全国センターとして関係者の努力に敬意を表するものです。
 全国センターは、この間、VDT労働衛生管理について、プロジェクトチームを編成し、研究者、専門家、労働組合の安全衛生担当者などと広く意見を交わし、その内容を「VDT労働衛生基準に関する要求書」にまとめ、2001年4月17日付で厚生労働大臣宛に提出し、2回にわたって厚生労働省に要請を行ってきた。今回の「報告書」が私たちの要求書の内容を一定盛り込んでいることを評価すると同時に、私たちの要求書との関係を含め、報告書に関する意見を表明するものです。

報告書の積極面として、以下のことが挙げられる。

1、対象となる作業については、事務所で行われるVDT作業だけでなく、事務所以外の場所や在宅ワークも入れたこと。また一般正社員、パートタンマー、派遣労働者、臨時職員等の就業形態の区別なく、作業者がVDT機器を使用する場合はすべて本報告の対象にしたこと。また高齢者、障害者への配慮も述べていること。

2、最近の人間工学的到達点を反映させた内容になっていること。

3、事業者の責任を安全衛生基本方針の明確化の上に、安全衛生計画の作成、作業環境管理、作業管理、安全衛生管理体制の確立の必要性を盛り込んでいること。

4、安全衛生教育、健康診断、事後指導について、一定系統だった制度を提起していること。

5、「指針」の位置付けを「労働安全衛生マネジメントシステム」や「事務所衛生基準規則」などの関連で示したこと、などである。

一方、問題点、今後改善が求められる点としては、

1、使用者への罰則規定を含め、法的拘束力や遵守義務が明記されておらず、各事業所で本報告の内容が実際に実施されるかが不明確であること。

2、本報告に基づく事業所での「基準」策定にあたって、(安全)衛生委員会での協議とあわせ、労働組合あるいは労働者代表との協定をしなければならないことを明記すべきこと。

3、無制限の作業時間を規制するためにも「1日の作業時間」の制限を明記し、事業主の時間管理を明確にし、1日8時間、週40時間の原則を明示すべきこと。

4、夜勤交代制勤務者のVDT作業については、夜勤交代制勤務との相乗的負荷を考え作業時間の制限を特に明記すべきこと。

5、定期健康診断において、作業区分Bの従事者についての眼科的検査、筋骨格系検査は、医師の判断によって必要と認められた場合行うとの制限をはずし、作業区分Aと同じに実施すべきこと、などである。

 以上の立場で、私たちは、今後共引き続いて、本報告の職場での完全実施の取り組みと改善の取り組みをすすめていく決意を表明するものである。

以 上