2 0 0 1 年 11 月 15 日
厚 生 労 働 大 臣
  坂  口   力 様

   働くもののいのち健康を守る全国センター
      理  事  長    辻  村  一  郎
「VDT労働衛生基準」に関する要請書

 貴職の日頃の職務とご努力に敬意を表します。                  

 1980年代にコンピューター・OA化が急速にすすみ、VDT労働による健康障害が予測されるなかで、労働省が「VDT作業のための労働衛生上の指針」(198512月)を出してから15年が経過していますが、現在貴省の検討会において「VDT労働の労働衛生基準」の見直し作業が行われています。

そして先日、「新しい作業指針のたたき台」が「日本産業衛生学会VDT作業研究会」に出され、私たちもその内容について検討してきました。

全国センターとしてこの間、貴省に対しVDT作業基準については昨年の12月と今年4月「要請書」を提出し、懇談を行なってきておりますが、今回は「たたき台」の内容にそって下記の項目について検討、改善を要請するものです。

 

< 要 請 事 項 >

1、今回の「基準」もこれまでと同様、罰則規定のない「行政指針」として出されようとしているが、それでは使用者が守らないし、労働者にも徹底されない弊害がある。

「VDT作業基準」は、使用者への罰則規定を含め、遵守義務を明記すべきであり、少なくとも「行政指針」ではなく「大臣の技術的指針」にして法例と同格にすべきである。

 

2、労使双方が「VDT作業基準」を遵守し、徹底するためには、使用者が労働者にVDT作業をさせる際には労働組合、労働組合がない場合は労働者代表と「VDT作業基準」を協定しなければならない事を明記すべきである。

 

3、労働衛生管理基準は、「労働安全衛生マネジメントシステムに関する告示」に基づき、特に労働者(作業者)の参加、リスクアセスメント、国際労働基準の内容を明記すべきである。あわせて「快適職場指針」と本指針を関連づけること。

 また、労働衛生管理活動は、安全衛生委員会などで常に労働者(作業者)参加のもとに行なうこと。

 

4、対象労働者にパート・派遣・臨時など不安定雇用労働者も含めたことは評価したいが、派遣労働者などの労働衛生管理責任を明確にすべきである。

 

5、VDT作業時間の1日作業時間は最高8時間、週作業時間は最高40時間など上限を設ける必要がある。同時に4月6日の厚生労働省「通達」をふまえ事業主の時間管理掌握は厳格にし、夜間におけるVDT作業は制限すべきである。

 

6、すでに9割を超す事業所にパソコンが導入され、9割以上の労働者がVDT作業をしている実態から「現行VDT健診の配置前・配置後の項目」を「入社時」を含め「法定定期健康診断項目」に入れ、全ての労働者を対象に実施する必要がある。

 

7、パソコン等の機器は頻繁に新機種が出されており、圧倒的多くの労働者がすでに使用し、それ以外の労働者もさまざまな影響・関連性をもっている。全ての労働者を対象に定期的・計画的に繰り返しVDT教育を行なう必要があり、「労働衛生教育」に「VDT作業に関する定期的・計画的な教育」を加える必要がある。

 

8、9割を超す事業所にパソコンが導入されている現状から、「事務所衛生基準規則」や「労働安全衛生法・規則」等を「VDT作業」を前提に全面的に改正し、「VDT作業基準を守らせる事務所の環境、労働条件の確保」を義務づけることを明記すべきである。

 

9、「IT革命」といわれる下で、多くの国民が使用する機器が次々と「開発」されているが、国民の健康への影響や安全を最優先した「製品開発基準」を明確にして、厳格に守らせると共に、ユーザーからの意見を重視した製品開発にするよう明記すること。

 

10、本指針案に対しパブリックコメントを広く求め求め、その内容も指針に反映させること。

(以 上)