2 0 0 1 年 4 月 19 日
厚 生 労 働 大 臣
  坂  口   力 様

働くもののいのち健康を守る全国センター                         
      理  事  長    辻  村  一  郎
「VDT労働衛生基準」に関する要請書


  貴職の日頃の職務とご努力に敬意を表します。                  
 私たち全国センターは1998年12月設立以来、「誰もが健康で人間らしく働ける職場と社会」の実現を目標に活動をすすめ、昨年12月第3回総会を開催しましたが、その直後、貴省(当時は労働省)に対し「サービス残業の解消と長時間労働の改善について」「過労死の労災認定基準見直しにあたって」「VDT労働の労働衛生基準の見直しにあたって」などを中心とした要請等も行ってきました。  その際の回答にもあったように、現在貴省の検討会において「VDT労働の労働衛生基準」の見直し作業が行われています。
 1980年代にコンピューター・OA化が急速にすすみ、VDT労働による健康障害が予測されるなかで、労働省が「VDT作業のための労働衛生上の指針」(1985年12月)を出してから15年が経過しています。 その後、労働省のおこなった「平成10年度技術革新と労働に関する実態調査結果速報」(1999年12月) および「報告書」(2000年 2月)によると、「身体疲労・自覚症状がある」78%、「精神的な疲労やストレスを感じる」36%と、急速な技術革新が労働の質を変え、労働者の健康への影響がきわめて大きい事を示しています。
 いま、情報技術(IT)革命がいわれていますが、このままでは労働時間短縮、快適な職場環境など労働条件の改善に結びつかず、結局のところIT革命=VDT関連労働は心身の疲労を増大させるという苦痛のみが労働者におしつけられ、労働のゆとりと逆行する事態になりかねません。                         
 昨年10月10日(世界精神衛生の日)、ILOから「職場の精神衛生」と題する報告書が発表され、10人に1人がうつ状態やストレスに苦しみ、IT革命の進展によって、健康障害の発生が高まる可能性が指摘されています。             
 今後、IT革命の影響が競争を加速化させ、健康障害を増大させることが強く懸念されるなかで、今回の「VDT作業指針」見直しはきわめて重要な意味をもつものとなっています。
 つきましては、これまでの検討会での検討経過・今後の予定等を明らかにすると共に、下記の要請項目を「VDT労働の労働衛生基準」見直しに加えるよう強く要請するものです。

< 要 請 事 項 >
1、これまでのような罰則規定のない「指針」では、使用者が守らないし、労働者にも徹底されない弊害があり、「VDT作業基準」は、使用者への罰則規定を含め、遵守義務を明記すべきである。

2、労使双方が「VDT作業基準」を遵守し、徹底するためには、使用者が労働者にVDT作業をさせる際には、労働組合、労働組合がない場合は労働者代表と「VDT作業基準」を協定しなければならない事を明記すべきである。

3、実態調査でも派遣労働者などの不安定雇用労働者の労働実態、健康への影響などが深刻となっており、「VDT作業基準」は、パート・派遣・臨時など不安定雇用労働者をも対象に含める必要がある。

4、VDT作業が長時間・過密労働にならないためには「1日作業時間」や「1連続作業時間」などの作業時間規制、具体的な作業環境の明記が是非必要となっている。 

5、すでに9割を超す事業所にパソコンが導入され、9割以上の労働者がVDT作業をしている実態から「現行VDT健診の配置前・配置後の項目」を「入社時」を含め「法定定期健康診断項目」に入れ、全ての労働者を対象に実施すること。  

6、政府の調査でも「コンピューター使用による精神的な疲労やストレスを感じている労働者は36.3%」に達し、女性や高齢者、長時間作業者ではさらに高い率となっており、「VDT健診」には、メンタルヘルスのための健診項目も含めるべきである。

7、パソコン等の機器は頻繁に新機種が出されており、また9割の労働者がすでに使用し、他の労働者もさまざまな影響・関連性をもっている。全ての労働者を対象に定期的・計画的に繰り返しVDT教育を行なう必要があり、「労働衛生教育」に「VDT作業に関する定期的・計画的な教育」を加えること。

8、9割を超す事業所にパソコンが導入されている現状から、「事務所衛生基準規則」や「労働安全衛生法・規則」等を「VDT作業」を前提に全面的に改正し、「VDT作業基準を守らせる事務所の環境、労働条件の確保」を義務づけること。

9、「IT革命」といわれる下で、多くの国民が使用する機器が次々と「開発」されているが、国民の健康への影響や安全を最優先した「製品開発基準」を明確にして、厳格に守らせると共に、ユーザーからの意見を重視した製品開発にすること。
( 以   上 )