【事務局長談話】
 電通過労自殺訴訟、最高裁判決について

2000年 3月24日
働くもののいのちと健康を守る全国センター
事務局長 池田  寛

 本日、「過労自殺」をめぐる初めての最高裁判決が下された。私達は、最高裁の下した判決が、「上司が仕事を減らすなど具体的な対応を怠った」と企業の責任を断罪し、賠償額においても、高裁差し戻しの判決を下したことに歓迎の意を表するものである。
 とりわけ、最高裁が「使用者は業務の遂行に伴う疲労や心理的負担が過度に蓄積して、労働者の心身の健康を損なうことがないよう注意する義務を負う」との新判断を示したことは、現在の多くの企業においてリストラ・人減らしにより労働者が超過密労働・長時間労働を強いられている下では、きわめて重要な判決と言えよう。
 今回の争点は、「企業責任」と上告審での「賠償減額」であった。すなわち第二審東京高裁は、第一審に続き、会社側の責任は認めながらも「元社員も時間の適切な使用方法を誤り、深夜労働を続けた面もある。両親もこれを改善するための具体的措置をとっていなかった」などと判断し、こともあろうに過失相殺を適用して一審で東京地裁が命じた損害賠償額を3割減額したのであった。
 そして最高裁の弁論で被告電通側は、「自殺と長時間労働には因果関係はなく、自殺を回避する安全配慮義務も無い。同居し、生活条件を把握していた両親には保護責任があり、会社には無い」と被災者の両親に全面的に責任を転嫁する主張を臆面も無く繰り返した。
そこには、前途ある青年を死に追いやった企業責任は、微塵も感じられず、まさに「人の道」にそむくものであった。今回の判決によって改めて企業が安全・健康の下で労働者を働かせる責任を明らかにした。今回の判決に接し、私達は改めて過労死・過労自殺のすみやかな業務上認定や裁判における勝訴実現のために一層多くの人達と連帯して運動すると共に、過労死・過労自殺の無い、職場を、社会を実現するために奮闘するものである。
(以 上)