全国センター第14回総会


第14回総会決定集

第14回総会の概要

働くもののいのちと健康を守る全国センターは、12月9日、平和と労働センター2階ホールで第14回総会を開催した。代議員・役員など104人が参加、21件・22人が発言した。活動方針、2012年度予算などの議案が一括採決に付され満場の拍手で採択された。

  1. 開会あいさつを松永康之輔副理事長が行い、議長に福富保名代議員(建交労)と濱住邦彦代議員(東京センター)を選出した。資格審査委員を蟹沢昭三代議員(全教)、稲木健志代議員(神奈川センター)、中林正憲事務局次長が、議事運営委員を坂井志乃代議員(自治労連)、鈴木明男代議員(愛知センター)、高橋敏夫理事がつとめた。
  2. あいさつした福地保馬理事長は、「ディーセントワーク獲得にむけ熱い討論を」と呼びかけた。
  3. 来賓の玉木一成弁護士(過労死弁護団全国連絡会議事務局長、東京駿河台法律事務所)からあいさつを受けた。祝電・メッセージがILO駐日事務所、全農協労連、全国保険医団体連合会、川人博弁護士(過労死弁護団全国連絡会議幹事長)日本共産党中央委員会、日本共産党高橋千鶴子衆院議員・同田村智子参院議員から寄せられた。
  4. 岩永千秋事務局長が活動方針案を提案。ディーセントワーク獲得と政策・制度要求の実現、職場・地域でいのち、健康を守る活動、被災者救済と補償など6つの柱で活動の到達点を報告。大震災被災地での健康障害予防で行政の前向きな変化をつくりだしたことや、結集する地方センターが過半数を超えたことなどを確信に、異常な長時間労働の是正、夜間労働を規制して人間らしい労働と生活を保障する職場と社会の実現を呼びかけ、全労連のディーセントワーク署名の展開を提案した。
  5. 2011年度の一般会計、全国センター基金会計、財政強化積立金会計の各会計の決算報告と12年度一般会計予算案を岡村やよい事務局次長が報告。菅田敏夫監事が11年度会計監査報告を行った。
  6. 討論で、全教の代表は、教職員の超過勤務は月平均60時間以上の長時間労働だと発言。宮城センターの代表は、県内教職員の3割がうつ・抑うつ状態にあるとの調査結果を紹介した。京都センターの代表は、原発廃炉まで30年、原発労働者のいのちと健康を守る運動の強化が求められているとして、「いの健」センターの重点の一つにすべきと発言。山梨の代表は、過労死の認定基準を改善する必要性を強調した。自治労連浜松市職組の代表は、消防職員のアスベスト公務災害認定で勝利したと報告。北海道、神奈川、大阪の代表がアスベスト根絶について語り、裁判勝利への決意を表明。建交労の代表はトンネルじん肺基金の創設について述べた。
    *代議員の発言要旨は「全国センター通信」12年1月号の総会特集を参照されたい。
  7. 第8回働くもののいのちと健康を守る全国センター賞が小池友子さんとマツヤデンキ小池さんの労災認定裁判を支援する会、上段さんの過労自殺裁判を勝たせる会に贈られ、「支援する会」事務局長・鈴木明男さんと「勝たせる会」会長・生熊茂実さんが受賞の言葉を述べた。
  8. 新年度役員の推薦提案を長谷川吉則副理事長が行い、提案のとおり確認された。退任役員と新役員を福地理事長が紹介した。理事を退任し参与に就任した木下恵市さんがあいさつを行い、会場から万雷の拍手が送られた。
  9. 「総会宣言」案を伴香葉理事が提案し、満場の拍手で採択した。
  10. 田村昭彦副理事長が「近年まれにみる従事した総会だった」と閉会あいさつを行った。
  11. 日本学術会議提言「労働・雇用と安全衛生にかかわるシステムの再構築を」をテーマに、岸玲子北海道大学環境健康科学研究教育センター・センター長が記念講演を行った。

以上

第14回総会活動方針

目次

はじめに

T.働くものをめぐる情勢―「いの健」運動の視点から

  1. 国民の期待を裏切る民主党政権
  2. 東日本大震災・原発事故後の情勢
  3. 働く人びとの状態と健康をめぐる状況

U.主要な活動の到達点とこれからの取り組み

  1. ディーセントワークの獲得と政策・制度要求の実現、働くもののいのち・健康を守る活動
  2. 東日本大震災の被災者支援の活動
  3. 職場・地域で働く人びとのいのち、健康を守る活動
  4. 被災者救済と補償
  5. じん肺、アスベスト対策
  6. 公務・公共サービスの充実、労働行政の拡充を求める活動
  7. 国際連帯の活動
V.地方センターの確立・強化と全国センターの機能強化
  1. すべての都道府県に地方センターの確立をめざす活動の到達点とこれからの取り組み
  2. 地方センターの活動の到達点と課題
  3. いのちと健康を守る活動家の育成
  4. 全国センターの機能強化と季刊誌・「通信」読者の拡大

〈総会スローガン〉

すべての働く人にディーセントワークの獲得を。
政策・制度要求の実現、全都道府県での地方センター確立で、
働くもののいのちと健康を守る事業の新たな地平を切り拓こう。

はじめに

 3月11日に発生した東日本大震災と原発事故は、日本社会の歪みを示すとともに、この国のあり方、エネルギー多消費社会、「24時間型社会」を見直す契機となった。
 大震災の被災地では、市町村合併や自治体リストラで公務員を削減してきたことが被災者の救援・復興の大きな障害となっている。国策として進められてきた「原発」推進政策は、「安全神話」が崩壊し、「いのちと原発は共存できない」との世論が高まり、原発なくせの運動が草の根から広がっている。「原発ゼロをめざす7・2緊急行動」「さようなら原発9・19集会」「なくせ原発10・30福島集会」「さよなら原発!福岡集会」(11/13)などが相次いで成功し、毎週末には全国各地で自発的な行動が起きていることがそのことを物語っている。
 「いの健」全国センターは、「すべての働く人にディーセントワーク(働きがいのある人間らしい仕事)の獲得を」をかかげ、「24時間型社会」のあり方を根本的に見直し、異常な長時間労働を是正し、夜間労働を規制して人間らしい労働と生活を保障する職場と社会の実現にむけ、国民共同の取り組みを推進する。
 開催する第14回総会は、@前総会以降の活動到達点をふまえ、東日本大震災・原発事故後の日本社会の変化と、民主党・野田政権の発足など情勢の特徴点の意思統一の上に、1年間の活動方針の確立、A新しい方針の実践の先頭に立つ理事会の確立、B活動を支える2012年度予算を決定し、働くもののいのちと健康を守るとりくみの前進をめざすことが中心目的である。

T.働くものをめぐる情勢−「いの健」運動の視点から


1. 国民の期待を裏切る民主党政権

@ 2年前の「政権交代」で国民が民主党政権に期待したのは自民党政治からの変化だった。しかし、民主党政権がおしすすめる政治は、どの問題をとっても大企業中心、アメリカ従属の自民党政治への回帰であり、期待はいまや、失望、怒りに変わっている。
 9月2日、民主党・野田政権が発足した。野田首相は組閣も終わらないうちから自民党、公明党と党首会談を行い、子ども手当や高校授業料の無償化など民主党の目玉公約を見直すことを約束した。法人税減税や消費税増税なども民主党、自民党、公明党の3党で協議して進めていくことを決めた。
 事実上の「民主・自民・公明翼賛体制」ともいうべき動きがつくられるもとで、消費税増税、原発の再稼働と原発依存への固執、米軍普天間基地の辺野古「移設」などアメリカと財界言いなりの悪政が加速する危険性がある。しかし、この動きは「自民党政治を変えてほしい」という思いを「政権交代」に託した国民の願いを真っ向から裏切ることになり、国民との矛盾を深くすることは確実だ。
A 野田首相はTPP(環太平洋連携協定)交渉参加にむけて関係国との協議に入ることを表明した。「関税ゼロ」を強要するTPPは、農林漁業を土台からこわすだけではなく、「非関税障壁」撤廃の名のもとに食の安全、医療、雇用などのルールをこわし、くらしのあらゆる分野に甚大な被害をもたらすものだ。アメリカ政府は、「ただ働き残業」を合法化するホワイトカラーエグゼンプションの導入や、会社が自由に解雇できる「解雇の金銭解決」、労働者派遣法のいっそうの規制緩和などアメリカ型に日本の労働法制を改悪することを要求している(日米投資イニシアティブ報告書)。医療では、お金のあるなしで受けられる医療に差をつける混合医療制度の導入を求めている。これが拡大すれば、保険証1枚あればどこでも医療がうけられる日本の公的医療保険制度が破壊されてしまうことになる。アメリカの顔色をうかがって「国のかたち」を大きく変えてしまうような大問題の結論を急いで出すことは「亡国の政治」以外の何ものでもない。
 TPP参加反対の声は大きく広がり、農漁民、医療関係者、労働組合、消費者団体をはじめ、広範な人たちがたたかいにたちあがっている。「いの健」全国センターは幅広い国民共同の取り組みに連帯し、野田内閣の暴走を押しとどめるために奮闘する。
B 民主、自民、公明の3党は労働者派遣法改定法案の修正協議で、製造業務派遣と登録型派遣の「原則禁止」事項を改定案から削除することで合意した。合意では違法派遣があった場合に派遣先が雇用を申し込んだものとみなす規定の施行は3年先送り、日雇い派遣の禁止についても「2カ月以内」の雇用契約の禁止を「30日以内」に改めている。3党合意は「抜け穴」ばかりの「原則禁止」さえ削除してしまう「骨抜き」であり、自公政権時代の「改正」案にほぼ逆戻りする内容だ。「年越し派遣村」などで大問題になった「派遣切り」を解決する抜本改正こそ必要であり、「いの健」全国センターは労働法制中央連絡会の構成員として、派遣法改定案の後退を許さず、抜本改正を求めていく。



2. 東日本大震災・原発事故後の情勢

 東日本大震災・原発事故から、9カ月になる。被災地では関係者の必死の努力で、徐々に復旧しつつあるが、漁業をはじめ生活再建のメドはたっていない。「政府は、いったい何をしているのか」との声が広がっている。東電福島原発事故で放出されたセシウムなどの放射性物質の量は、広島に落とされた原爆の166倍にものぼる。住民の不安を解消するために、放射能の除染でも被害の賠償でも、政府は責任をもって、被災者の声に応えるべきである。
@ 大震災以降、日本経団連などが、より一層、「構造改革」強化を政府に迫り、「創造的復興」などと言って企業の儲けの場を拡大、利権獲得の動きを強めている。ここでも、労働者・国民、農漁業者、中小零細企業・事業者の要求と、財界・大企業の要求との矛盾の高まりが不可避になっている。
 したがって、「雇用の安定と社会保障の整備・拡充による国民生活の安定か、それとも破たんが明らかな市場万能主義を継続するのか、いずれを重視するのか」を争点とする激しいせめぎあいは、大震災以降、より激化している。この点に目を向け、活動を前進させることが、大切になっている。
A 経団連は震災直後の3月31日、「震災復興にむけた緊急提言」を行っている。その中では、イ.復興の実施体制として「震災復興庁設置、道州制も視野に入れた自治体間協議の促進」 ロ.(地域の)広域復興、広域産業復興計画(含む農林畜産業)の立案と実施 ハ.復興を口実とする規制緩和 二.復興財源のための時限的な増税、などを求めている。また、震災からの復旧・復興のためとして、171項目もの規制緩和要望を4月28日に政府あてに出し、「労働時間規制の弾力化」や「36協定上限緩和」、「不利益変更手続きの緩和」や「有期雇用の上限期間緩和」、「労働者派遣法26業務の弾力運用」や「建設業派遣の弾力運用」、「請負規制の緩和」など、労働時間、雇用、派遣・請負などについて、従来の改悪を改めて求めている。
 災害を契機に労働者保護規制が緩和された苦い経験も踏まえ、労働時間、雇用規制、間接労働規制の運動の強化が求められている。
B 経団連は9月、2011年度の規制改革要望をまとめた。それによると雇用・労働分野(全部で12本。うち、6本が労働者派遣法絡み)では、ホワイトカラーについて8時間労働制など労働時間規制の対象外(エグゼンプション)とする制度の導入に今も執念を見せている。11年度は新たに、派遣期間に制限のない「専門26業務」について、コピー取りや掃除など本来の専門業務ではない仕事を与えやすくする規制緩和を加えた。常用雇用の派遣労働者に対する雇用申し入れ義務規定の撤廃も新たに設けた。前年度からの継続案件では、派遣期限の3年から5年への延長、現行法では医師だけが認められている医療関連業務への派遣を、医師以外にも拡大することなどを訴えている。
 規制改革要望は関連省庁への要請に活用されてきたことから、今後の動向に十分な注意を払う必要がある。

*いの健センター「働くもののいのちと健康を守る政策・制度要求」より
  • 中間管理職や裁量労働制の労働者の時間管理をきちんとさせること。管理職としての権限、実態のない「名ばかり管理職」に対する残業不払いをなくすこと。
  • 事業主の労働時間管理をなくし違法な不払い残業労働を合法化する「ホワイトカラー・エグゼンプション」制は導入しないこと。

C 「いの健」全国センターは、財界・ゼネコン中心の「構造改革型」復興、原発依存の社会ではなく、被災者・被災地本位の「人間復興」、「原発ゼロ」、再生可能な自然エネルギ―への転換による「安心・安全な住み続けられる地域、日本」をめざす国民的共同を支持し、連携した取り組みを進める。



3. 働く人びとの状態と健康をめぐる状況

1、働く人びとの状態―ディーセントワークとかけはなれた労働者の状態
@ 非正社員38・7%に、厚労省の調査。
 労働者に占める非正社員の割合が38・7%と過去最高になったことが8月29日、厚生労働省が発表した2010年「就業形態の多様化に関する総合実態調査」結果で分かった。派遣労働者の割合が減少する一方、契約社員や嘱託社員が増加している。
 調査は、従業員5人以上の民間事業所が対象。それによると、正社員以外の労働者の割合は、前回(2007年)の調査より0・9ポイント増え、38・7%となった。就業形態別にみると、パート労働者や契約社員、嘱託社員などの割合は増えたが、派遣労働者の割合は低下した。
 非正社員の活用理由では「賃金の節約のため」が43・8%と最も高い割合となっている。
A 貧困率、過去最悪の16%に 厚生労働省2010年国民生活基礎調査(7月12日発表)。 全国民の中での低所得者の割合や経済格差を示す相対的貧困率が2009年に16・0%となり、1985年以降で最悪になった。前回調査(06年)では15・7%だった。
B 年収200万円以下1000万人超 給与所得者、5年連続で。
 年収200万円以下の給与所得者が5年連続で1000万人を超えていることが、国税庁の民間給与実態統計調査から分かった。 同調査によると、2010年の1年を通じて勤務した給与所得者は4552万人。うち年収200万円以下は1045万人で全体の22・9%を占めた。とくに女性は42・7%にのぼった。
 貧困の拡大で生活保護受給者は202万人・145万8千世帯となり、子どもの貧困や高齢者の「孤独死」が社会問題となっている。
 その一方で、大企業は内部留保を積み増しし、266兆円の空前の金あまり状態にある(資本金10億円以上、金融関係除く約5000社。10年度、「法人企業統計年報」)。大企業の金あまりを、人間らしい安定した雇用や社会保障の立て直し、東日本大震災の復興財源として社会に還元させること、大企業に社会的責任を果たさせるたたかいの発展が求められている。

2、いのちと健康をめぐる状況
@ 壊される人間らしい働き方。
イ、100時間を超える労働者がいた事業所は6・0%、厚労省「労働安全衛生基本調査」。
 厚生労働省は、9月1日、2010年「労働安全衛生基本調査」の結果を公表した。それによると、1カ月あたり100時間を超える労働者がいた事業所は6・0%。メンタルヘルス上の理由で連続1カ月以上休業・退職した労働者がいる事業所は7・3%。現在の職場でヒヤリ・ハット体験をした労働者は40・5%(5年前の前回調査では62・0%)となっている。
ロ、有給休暇の取得率は48・1%、厚労省発表。
 厚生労働省が10月20日発表した就労条件総合調査によると、昨年1年間の正社員の有給休暇取得率は48・1%で前年から1・0?の上昇にとどまった。政府は新成長戦略で2020年までに取得率を70%へ引き上げる目標を掲げているにもかかわらず、実態は程遠いことが改めて示された。
 2010年に企業が付与した有給休暇は労働者1人平均で17・9日で、このうち実際に取得したのは8・6日だった。付与日数のうち何日休んだかを示す取得率を産業別にみると、最も高かったのは「電気・ガス・熱供給・水道業」の75・2%、最低は「宿泊・飲食サービス業」の32・5%。規模別では、従業員1,000人以上の企業55・3%に対し、30〜99人は41・8%と格差が大きい。調査は常勤の従業員30人以上の企業6,145社をを対象に実施し、4,299社から有効回答を得た。有効回答率は69・9%。
A 働く人びとの自殺、13年連続して3万人超。
 警察庁が発表した10年度の自殺者は31,560人で、13年連続で3万人を超えた。特に、若年層の自殺の深刻さが浮かびあがっている。
B 一段と深刻化するメンタルヘルス不全。
イ、厚労省がまとめた10年度の「個別労働紛争解決制度施行状況」によると、パワーハラスメントを含む「いじめ・嫌がらせ」の相談件数は10年度3万9405件で前年度比10・2ポイント増となった。02年度に統計を取り始めて以来、初めて「労働条件の引き下げ」を上回り、「解雇」に次いで2番目に多い相談内容となった。
 厚労省は職場での上司のパワーハラスメントや同僚によるいじめの対策について話し合う「職場のいじめ・嫌がらせ問題に関する円卓会議」を7月に立ち上げ、11年度内をめどに提言をまとめる方針を明らかにした。

*パワーハラスメント
 職場において職権などの力関係を利用して相手の人格や尊厳を侵害する言動を繰り返し行い、精神的な苦痛を与えることにより、その人の働く環境を悪化させたり、あるいは雇用不安を与えること。(中央労働災害防止協会発行「パワーハラスメントの実態に関する調査研究報告書」05年8月)

ロ、日本生産性本部が上場企業3452社に聞いた調査では、「心の病」にかかる人が「増加傾向にある」と答えた割合は45・8%で「横ばい」は42・7%と、依然減少に転じる兆しは見えない。
 「心の病」の主な要因は複数回答で、「職場の人間関係」「業務遂行に伴うトラブルや困難」「重すぎる仕事の責任」「長時間労働」「職場のパワーハラスメント」など、勤務に関わる問題が全回答の6割に。これらは「企業側がコントロールできる問題」だとしている。
ハ、「心の健康不調」増加、「未対策」の事業所32%、労働政策研究機構6月23日発表。

〜「職場におけるメンタルヘルスケア対策に関する調査」結果〜
 メンタルヘルス不調の正社員がいる事業所は6割弱(56・7%)で、うち31・7%が3年前に比べて増えたと回答。減ったのは18・4%で、増加傾向にあることを示している。
 不調の正社員がいる割合は企業規模別にみると、1000人未満の事業所で52・6%、1000人以上では72・6%で、規模が大きいほど高くなっている。産業別では、医療・福祉が76・6%でトップ、次いで情報通信業73・0%、製造業67・9%などとなっている。
ニ、09年度にうつ病などの精神疾患で休職した全国の公立学校の教職員は、前年度より58人増えて5458人となり、過去最多を更新したことが10年12月24日、文部科学省の調査で分かった。病気休職は8627人で、精神疾患によるものが63%を占めた。精神疾患での休職は92年度は1111人だったが、その後17年連続で増え、09年度は教職員全体の0・6%に達した。5458人を年代別に見ると、40代35%、50代以上39%とベテランが目立った。文科省は、多忙な職務や保護者からの要望多様化、生徒指導の複雑化、職場の人間関係のトラブルなどが要因と分析している。自治体の対応では、メンタルヘルスに関する相談窓口を設け、面接を行っていると回答した都道府県、政令指定都市は全体の9割、会議の見直しなど職務効率化を学校に指導しているのは8割だった。
C 精神障害などの労災請求件数が2年連続で過去最高に。

 2010年度、職場でのトラブルなどでうつ病などの精神障害を発症し、労災請求を行った件数は1181件に上った。このうち308件が認定され、ともに過去最高となった。業種別では、医療・介護分野での申請が最も多く、合わせて169件に上る。過労死による労災請求は802件で、4年ぶりに増加に転じた。
 今回の調査には東日本大震災関連のケースは含まれていないが、厚生労働省は今後、震災関連の労災請求が増える可能性があるとみている。
D 労働災害による死亡者が11年ぶりに増加。
 5月20日、厚生労働省は「平成22年における死亡災害・重大災害発生状況等」を公表した。2010年の労働災害による死亡者数は1,195人(前年比120人増、11・2ポイント増)で、11年ぶりに増加となった。
 業種別では、建設業が365人で最多、次いで、製造業211人、陸上貨物運送事業154人。事故の型別では、「墜落・転落」が311人で最多、次いで、「交通事故(道路)」278人、「はさまれ巻き込まれ」171人、「激突され」73人、「崩壊・倒壊」67人となっている。
 重大災害(一時に3人以上の労働者が業務上死傷又はり病した災害)は245件(前年比17件増、7・5ポイント増)。業種別では、建設業が87件で最多、次いで、製造業が49件。事故の型別にみると、「交通事故」が全体の47・3%を占める。
 経営環境悪化のしわ寄せが安全に及んでいるとの懸念も。建設業団体の調査によると、6割を超える企業が安全衛生への影響があると答えている。製造業では企業規模が小さくなるほど、死亡災害の発生率が高まる調査結果もあり、注意が必要だ。
 10年夏の猛暑を反映し、熱中症による被災が多いのも特徴だ。小売や社会福祉・介護などのサービス業での転倒や腰痛が、休業4日以上の死傷者数を押し上げている。
 被災地の復旧・復興作業で、不慣れな人が、建物の解体やがれき処理などの工事に携わるため、労災の増加が懸念されている。既に復旧作業で、100人を超える人が死傷した。屋根からの転落や荷崩れによる死亡が確認されている。阪神・淡路大震災では944人の労災死傷者を出した。今後、復旧・復興作業の雇用が本格化する。安全衛生教育の徹底や安全装備の使用など、十分な対策が求められる。
 ディーセントでない働き方・働かせ方が広がるもとで、過重労働による健康障害やメンタルヘルス不調が増大しており、職場で働くもののいのちと安全を守る活動がいよいよ重要になっている。


U.主要な活動の到達点とこれからの取り組み
1. ディーセントワークの獲得と政策・制度要求の実現、働くもののいのち・健康を守る活動

 第13回総会では、働くものをめぐる状況が厳しさを増しているなかで、いの健運動の果たす役割の大きさを確認し、1年間の重点課題を総会スローガンの3つの柱(@すべての働く人にディーセントワークを獲得しよう、A全国センターの政策・制度要求を実現しよう、Bすべての都道府県に「いの健」センターを確立しよう)で示した。
 自らを「『ディーセントワーク』の実現をめざす労働者と国民の広範な共同運動の一翼を担う」と位置づけるとともに、「全国センターの政策・制度要求は、いのちと健康を守るたたかいの方向性を示すもので、ディーセントワークの実現に寄与するもの」と両者の関係を明確にした。

1、「いの健」全国センター政策・制度要求の実現にむけた到達点
 「いの健」全国センターは、第12回総会(2009年12月)で、約2年にわたる全国的な検討を経て、「働くもののいのちと健康を守る政策・制度要求」を決定。2010年6月には労働基準行政検討会を中心に第1回の厚労省交渉要請を行い、菅直人内閣総理大臣および長妻昭厚生労働大臣に要求書を提出、労働安全衛生分野を中心に交渉を行った。
@ 11年4月には2回目となる厚労省要請を実施し、政策・制度要求のうち「第5 労災などの認定基準」に関わり交渉を持った。要請では、「精神障害等認定指針改訂要請書」と「脳・心臓疾患等の過労死認定基準の改訂要求」を提出。「精神障害等認定指針改訂要請書」については厚労省専門検討会資料として配布する方向を確認(5月の第6回検討会で資料として配布された)した。しかし、労基法施行規則35条別表に疾病名が掲載されたことによる基準の変更の必要性について厚労省は「昨年、別表に列挙したことは事実だが、それをもって認定基準を変更しなければならないとは思っていない」と返答した。「脳・心臓疾患認定基準」については、「改訂の必要はないと考えているが、裁判の(国側)敗訴事例の中で基準の運用上問題があるものがある」との認識を示した。要請団は労働環境の変化をふまえての改訂を更に求めていくこととした。
A 厚労省の「精神障害の労災認定の基準に関する専門検討会」に対し、「いの健」全国センターは労働基準行政検討会に「精神障害の労災認定基準の改正要求プロジェクト作業部会」を設置して作業を進め、9月2日付けで改訂要請書を提出した。
B 内閣府が「行政不服申立制度の改革方針に関する論点整理(第2版)」に関する意見募集を実施したことから、パブリックコメントへ不服審査及び再審査請求制度を見直すことを求める中林事務局次長の「意見」を提出した。
 「意見」では、不服審査制度について審査官を審理員とし、行政から独立した第三者を任命することや、再審査請求について現行の合議制を維持し、委員の国会承認を継続すること、地方公務員災害補償基金の不服審査制度について口頭意見陳述は、請求人から処分庁に対する質問権を認めた対審構造とすることを求めた。

2、政策・制度要求実現にむけたこれからの取り組み
@ 人間らしい安全な労働を保障する職場と社会を築くため、「いの健」全国センターは、基本的な要求として、第1に政府の基本政策にILOが提唱するディーセントワークを採用し実現をめざすことを求める。第2に働くもののいのちと健康を守る立場で労働安全衛生行政、労働者保護行政を拡充すること、既に批准しているILO第81号条約(工業及び商業における労働監督)を遵守し、労働基準行政監督官を十分確保することを求める。
 これらの要求実現にむけ、厚労省など関係する省庁との政策・制度要求での交渉を労働基準行政検討会が中心になって実施する。千葉県センターなどの先進例に学び、全国でも都道府県労働局への要請を追求することとする。
 「いの健」全国センターが提案したことが、国や自治体の実際の施策にどう生かされたのか、点検することが今後の課題となっている。
A すべての働く人にディーセントワークを獲得すること、そのための中心課題はすべての労働者の安定した雇用の実現にある。そして、その運動の第一義的な担い手は労働組合である。職場における働き方を見直す活動、ディーセントワーキングタイムの実現など、職場における労働組合活動の活性化と一体的に取り組む視点が重要だ。
 会員単産では、ブックレット「ディーセント・ワークの実現を―労働安全衛生活動の基本」(福地理事長著)を活用した学習会を単産本部、地方本部、支部で旺盛にとりくむこととする。そのため「いの健」全国センターは講師派遣に積極的にこたえる。
 全労連の「人間らしく働き生活できる雇用の実現を求める国会請願署名」(略称:ディーセントワーク署名)に協力・連携した取り組みを展開する。
B 異常な長時間労働の是正、必要最小限の夜間勤務への規制、ILO条約の批准をかかげ、「24時間型社会」の根本的見直しを求める運動を提起する。「そろって夕食・朝食が当たり前」の社会に、をテーマにした学習会やシンポジウムの開催などを検討する。
C 第12回総会で策定した「いの健」全国センター政策・制度要求について、この間の情勢の変化、今年発表した「脳・心臓疾患認定基準」の改訂要求、「精神障害判断指針」改正要求をふまえた増補版に改定する作業を労働基準行政検討会が中心になって進める。これにあわせて、会員単産、地方センターをふくめ全国的な政策・制度要求学習運動を展開する。国会議員、政党への要請活動を計画する。
D 政策・制度要求の実現にむけては、春闘と一体に職場からの取り組みを強めることを重視する。とくに労働時間短縮、労安活動の要求実現、各単産での要求討論(練り上げ)での活用、統一要求(基準)への反映を追求する。

3、日本学術会議「提言」の活用をはかる
@ 日本学術会議(労働雇用環境と働く人の生活・健康・安全委員会)が提言「労働・雇用と安全衛生に関わるシステムの再構築を―働く人の健康で安寧な生活を確保するためにー」を公表(4月20日)した。
  提言は、国の健康政策に「より健康で安全な労働」を位置づけるべきと述べ、日本のILO(国際労働機関)条約・勧告の批准の遅れを指摘している。時間外労働を含めた一日の最長労働時間を設定することや法的拘束力を持つ限度時間を設定するよう提唱、正規と非正規労働者の差別を禁止する法制度を求め、零細企業の安全衛生の法制度整備の充実を指摘している。これらは、「いの健」全国センターの政策・制度要求や運動課題と一致する点が少なくない。
A 「いの健」全国センターは、「提言」の学習会やパネルディスカッションの開催など積極的な活用をはかることとする。その際、労使と協力して安全衛生システムの構築をはかるとした「提言」の趣旨を生かす意味でも、中小企業家同友会など経営者団体や企業経営者の参加、震災の影響を含めた“まともな雇用”の問題など視野にいれる。

2. 東日本大震災の被災者支援の活動

1、全国センターと加盟団体による被災者支援活動
 「いの健」全国センターと加盟団体は、東日本大震災発生直後から被災者支援に取り組んできた。
@ 「いの健」全国センターとして、イ.宮城県センターの被災状況、関係者の安否などの状況把握、ロ.東日本大震災救援募金のとりくみ(9月末までに86万円余の募金が寄せられた)、ハ.全国センターのウェブや「通信」、季刊誌を活用した情報発信(宮城センターの状況、会員団体・地方センターによる支援活動の紹介、お役立ち情報の提供など)をおこなってきた。
A 各加盟団体では対策本部を立ち上げ、救援ボランティアの派遣、被害の実態把握と情報発信、支援物資の搬送、募金活動など被災地・被災者への支援活動に組織を挙げて取り組み、政府への緊急申し入れ等を実施してきた。医療、教育、自治体、国公など被災地に勤務する多くの労働者が自らも被災者でありながら不眠不休で救援活動にあたった。
 自治労連は、陸前高田市に「岩手被災地支援センター」を開設し、全国から駆け付けた自治労連の仲間のべ5200人を超えるボランティアを受け入れ、被災住宅の泥出しや被災者に救援物資を届けるなどの活動にあたった。
 多くの医療・福祉労働者などが支援に取り組むなか、全日本民医連の活動はその「規模の大きさと内容の豊かさ」において各界から大きな注目を集めた。「福島第一原発事故から何を学び、取り組むのか」の学習教材と「私の行動記録」が大量活用され、健康を守る運動が組織された。
B 大震災後開かれた全国センターの第2回理事会では「原発の災害処理で働く労働者たちの『放射線被曝』、災害地の復旧作業に携わった人たちの『アスベスト曝露』をはじめとしたさまざまな健康障害や負傷、医療労働者や自治体労働者などの『過労』等々も大きな問題であり、いの健全国センターらしい活動の展開が求められる」こと。これからの社会のあり方として、「『大量生産、大量消費、大量廃棄』、いわゆる『24時間型社会』という社会のあり方を、根本的に見直し、低エネルギー社会への転換をはかる。異常な長時間労働を是正し、夜間労働を規制して、人間らしい労働と生活を保障する運動の契機としていく視点が求められる」ことを確認した。
 この立場から「東日本大震災における健康障害予防に関する要請書」を提出(4月28日)し、厚労省への要請行動を実施した(5月19日)。化学物質ワーキンググループを中心に宮城・岩手両県への震災現地調査を実施した(6月3・4日)。

2、健康障害予防で関係省庁に要請、前向きな変化ひきだす
@ 厚労省が原発作業員の被ばく量を記録するデータベースを作成する方針を決めた。公務員補償基金が被災地公務員に「心のケア」臨床心理士を派遣した。これは、全国センターが厚労大臣、内閣総理大臣に提出した「東日本大震災における健康障害予防に関する要請書」で実現を求めた事項である。「いの健」全国センターや全日本民医連、全労連などの運動が行政の前向きな変化をつくりだしているといえる。
A じん肺キャラバン実行委員会〈「いの健」全国センター、全日本民医連、全国じん肺弁連、建交労など〉は、東日本大震災でのアスベスト対策の徹底を求め、厚労省・環境省に要請書を提出し〈5月13日〉、現地調査を踏まえた交渉を行ってきた〈7月29日〉。厚労省と環境省の東日本大震災アスベスト対策合同会議で、「業者やボランティアに防塵マスクの着用が徹底されていないことがわかり、対策を検討する」との報告が行われたが、我々の指摘と改善要求が的確で妥当だったことが証明された形となっている。

3、被災者支援と復興、これからの取り組み
 被災3県に、救援・復興岩手県民会議、みやぎ県民センター、ふくしま復興共同センターが設立され、「被災者が主人公の復興」をすすめる共同のセンターとして、大きく発展することが期待される。みやぎ県民センターには、いの健宮城県センターも構成員として加わっている。「いの健」全国センターは、被災地の復興運動への連帯と支援を引き続き発展させることを呼びかける。
@ 東日本大震災、原発事故からの復旧・復興は長期化が予想される。職場での働き方、アスベストなど危険物質への対策、職場のみならず仮設住宅や福島からの避難者などのメンタルヘルス、原発労働など、「いの健」全国センターからの提起、発信が果たす役割は大きい。被災地各県の復興県民会議、自治体への提言、政府への継続的な要請を行う。
 12年度の第1弾として、メンタルヘルス対策委員会でまとめた「東日本大震災におけるメンタルヘルス対策の提言のために」の活用をはかる。被災3県の復興県民会議・復興共同センター・県民センターの要求への反映や行政への要請の際に活用できるものに仕上げていく。 A 過酷な原発事故被害の状況も踏まえた労働安全衛生基準等の改善をめざし取り組みを進める。関係単産、地方センターや全労連の協力も得て、実態把握のための調査を実施することで準備をすすめる。


3. 職場・地域で働く人びとのいのち、健康を守る活動

1、職場でいのちと健康を守る活動の到達点
 非正規労働者の増加、長時間過密労働、成果主義賃金の広がり、職場のIT化などで労働環境は大きく変わった。職場の一体感がなくなり、孤立して働く人が増え、ハラスメントが横行し、メンタルヘルス不全が増大するなど働くもののいのちと健康はかつてなく厳しい状態に置かれている。
@ 全国労働衛生週間(10月1〜7日)にあたっての「呼びかけ」を7月発表し、「通信」9月号に掲載した。職場、単組・支部での安全衛生活動の活性化をはかる趣旨で、「通信」にシリーズ「安全衛生活動の交流」を連載。2〜11月号までで7回掲載してきた。
A 単産・職場での健康・安全を守る活動、労働安全衛生活動の一層の前進をはかることを目的に単産労安担当者会議を春(5月11日)と秋(10月4日)の2回開催した。
 第1回会議での確認にもとづき、労働安全衛生に関する単産の取り組みや職場の状況を把握し、今後の取り組みの基礎資料とすることを目的に「労働安全衛生に関する取り組みアンケート」を実施した。生協労連、日本医労連が調査に取り組み、集計と分析を行った。
 第2回会議では、阿部眞雄医師(全国センター理事)を講師に「職場におけるメンタルヘルス対策の問題点」のテーマで学習を行い、単産担当者から活動が報告され、メンタルヘルス不全、セクハラ・パワハラへの対応が重要な課題であることがあらためて確認された。新聞労連では大震災後の対応として惨事ストレスの学習に取り組んでいること、公務単産で労働協約締結権回復を見通して「これからの組合運動では、労安法と労働協約締結権を生かした組合運動を進め、協約を積み上げていくことが求められる」(自治労連)との報告があった。
B 単産でのメンタルヘルス対策を中心にした労安活動として、全教の職場復帰支援プログラムの策定や、職場復帰後の支援のために必要な講師配置を求めるとりくみ、化学一般労連の統一要求書「心の健康保持・増進に関する協約締結」の作成、生協労連の第12回いのちと健康を守る交流会(6月25・26日)開催とバワハラ防止指針の作成、自治労連の第19回自治体労働者の労働安全衛生・職業病全国交流集会(7月9・10日)、「メンタルヘルスケア自治体調査」、「実効あるメンタルヘルス対策、ハラスメントのない職場をつくるために 討議案」冊子の作成と学習の呼びかけ、国公労連の「セクハラ・パワハラ調査」のとりくみがある。
C 業務上災害や過労死・過労自死の予防策として、夜間労働や長時間労働、交代制労働の規制強化が改めて重要になっている。2011年春闘では日本医労連、国公労連、民放労連、出版労連、全印総連、映演労連などの労働組合が労働時間の短縮、勤務間隔○○時間の要求を掲げてたたかった。
 民放労連京都放送労組は、9年越しの取り組みを経て時間外労働の上限を1カ月45時間とする特別条項付きの36協定を11年春闘で締結し、協定の内容をまとめた冊子を作成した。高い水準の協定となったことの要因の一つとして、全労働京都支部との連携を挙げている。
 日本医労連は、看護職の勤務環境改善を求めた5局長通知「看護師等の『雇用の質』の向上のための取り組みについて」が発出(6月)されたことを関係団体や日本医労連が頑張ってきた成果として、「勤務間隔の最低12時間確保」「夜勤の時間はできるだけ短く」「残業削減」など職場の改善に活かす運動に取り組んでいる。
 建交労は、規制緩和されたトラック輸送産業で運転者の長時間労働を規制するため「改善基準告示」改定の提言を行った。
 全印総連は、産業政策提言、官公需印刷物の入札制度改善の取り組みを通じた適正単価収受で、まともな賃金、労働時間短縮など労働条件の改善をめざしている。
 郵産労は、郵便局での仮眠時間のない深夜勤(ふかやきん)に反対する運動を通して、東京の職場では4連続深夜勤が事実上実施できなくなるなど実質的な労働条件改善を実現した。
D 労働者のいのちと健康を守る活動として、福祉保育労の健康カレンダーの作成、民放労連の「一日労働相談」活動、国公労連・霞が関国公の残業実態調査、建交労(トラック部会)の民医連や医労連の協力を得ての高速道路PA・SAなどでの健康チェック(血圧、尿検査、体脂肪率など)の実施などがあげられる。
E 最近の人減らしリストラの手法としてPIP(業績改善計画=パフォーマンス・インプルーブメント・プラン)による解雇が日本IBMやブルームバーグなど外資系企業で横行している点に注意を喚起する必要がある。JMIUと新聞労連は、航空労組連(JAL安全無視不当解雇)、国公労連(社会保険庁分限免職)とともに、乱暴な解雇・退職強要に反撃する国民的な共同を広げようと、「許すな!乱暴な解雇・退職強要 声をあげよう4・14集会」を都内で開き、1000人が参加した。
 「いの健」全国センターは当該労組と連帯し、乱暴な解雇攻撃をやめさせる国民的世論を高めること、PIP解雇の日本企業への波及に歯止めをかけることを呼びかける。

2、労安活動の活性化などこれからの取り組み
@ 「朝、元気に“行ってきます”と家を出て、仕事が終われば五体満足で家に帰す。これは労働組合の役割ではないのか」―。職場で病気にもならずケガもせず、人間らしく働くことは労働者の権利であり事業者の責務である。働くもののいのちと健康を守ることは労働組合の原点であること、労働安全衛生活動は、賃金・労働条件改善とならぶ労働組合にとってもっとも基本的な闘争課題であり、労働組合活動の活性化や活動家育成にもつながることを念頭に取り組みの活性化をはかる。長時間労働や危険な労働・作業を規制し、健康を保持・増進する安全衛生の向上を追求する。
A 第5回「健康で安全に働くための交流集会」(健安集会)を労安活動の活性化、実践(活動の伝承を含め)の交流を目的に、実行委員会を中心に準備を進める。12年秋の開催をめざす。
B 厚生労働省が、「労働安全衛生法の一部を改正する法律案」を国会に提出する動きを見せている。健康診断と一緒にメンタルチェックが義務化される可能性がある。労働基準行政検討会や関係する委員会を中心に検討を行い「いの健」全国センターとしての態度表明を行う。

3、自営業者、中小零細事業所で働く人びとのいのちと健康を守る活動
(1)地域で働く人びとのいのちと健康をめぐる状況
1、「健康日本21」は国民の健康を増進したか
@ 10月7日、第6回健康日本21評価作業チームが開かれ、策定後10年を経過した「健康日本21」の最終評価が決定された。
 「健康日本21」は「個人の健康づくりの支援」を掲げ、生活習慣病をターゲットにして健康自己責任論に基づいて目標と計画が立てられ推進されたことに大きな問題がある。WHO(世界保健機関)は98年「健康の社会的決定要因 確かな事実の探求THE SOLID   FACTS」として健康課題の基礎に社会的決定要因があることを明らかにし、1.生活格差 2.ストレス 3.幼少期 4.社会的排除 5.労働 6.失業 7.社会的支援 8.薬物依存 9. 食品 10.交通 について公共政策の課題を明確にしている。
 「健康日本21」はこうした国際的な到達点に立って健康課題に取り組む計画ではなかったといえる。
A 厚労省は10年後を見据えた次期国民健康づくり運動の計画を策定するとしている。検討されている策定の指針では1.格差社会からの健康格差の問題 2.国民の健康権の保障3.国民参加の保障という視点はない。
 働くものの労働条件や労働環境の改善を健康政策のなかに位置づけ、働くもの一人ひとりが健康で豊かになることを国の優先順位とする計画の策定が求められているのではないだろうか。

2、自営業者、農民のいのちと健康の実態
@ 「全商連2010年度集団健康診断のまとめ」によると、集団健康診断の受診者で、結果 報告のあった13,871人のうち、有所見率は83・6%で過去最悪となっている。
 健康診断で指摘された主な疾患としては、「高脂血症」「高血圧」「肝機能障害」の順となっており、これらは、生活習慣病とよばれるもので、心疾患や脳梗塞などを引き起こ す要因となっている。中小業者の経営・くらしの危機と一体にすすむ健康破壊の実態が示されている。
A 農水省によると09年における農作業中の死亡事故発生状況は、408件で前年より34件増加した。このうち66・2%が農業機械作業に係る事故である。
 09年度の全産業の労働災害による死亡者数は1,075人。10万人あたりの事故件数で比較すると、農家は11・8件、労働災害での死亡件数は3件であることから3・9倍の事故件数となっている。毎日のように全国のどこかで悲惨な農作業事故死が起きている状況だ。

3、中小零細事業所で働く労働者の労安活動の実態
 厚労省発表の10年「労働安全衛生基本調査」から小規模事業所に焦点をあてて、その特徴をまとめてみると次のようになる。
@ 安全衛生推進者又は衛生推進者を選任している事業所は40・9%(10人〜29人規模)。
  05年調査(以下「前回」)は、23・3%であったので17・6ポイント伸ばしている。前回調査より伸ばしているが6割近い事業所で選任されていない。リスクの高い有害・危険作業が大企業から中小に下請けされており、安全衛生対策がないがしろにされている現状からみても大きな課題だ。
A 過去1年間に一般定期健康診断を実施した事業所の割合は84・5%。
  「有所見者における健康診断の結果についての医師等からの意見聴取」は35・6%、「健康診断結果に基づく就業上の措置」(27・5%)と低く、事業所の安全配慮義務責任が問われている問題だ。健診後の保健指導の実施も34%と低い水準にとどまっている。
B 「長時間労働者に対する医師による面接指導制度を知っている事業所の割合は 42・9%、「長時間労働者等健康への配慮が必要な者に対する医師による面接指導等の実施」は、4・4%、「時間外・休日労働が1カ月当たり100時間を超え、申し出を行った労働者に対して医師による面接指導を実施した」は、6・5%となっている。小規模事業所を面接指導する医師が圧倒的に少ない現状を反映しており、地域産業保 健推進センターの抜本的強化などの対策が急務だ。事業所の安全配慮義務責任が問われる問題といえる。
C 「雇い入れ時教育(常用労働者)を実施している事業所」は86・4%であるが、「臨時・日雇い労働者の雇い入れ時教育」は25・9%、「作業内容を変更する場合に対象となる労働者に対する教育」は52・7%となっている。これらの事項の未実施事業所には罰則規定が適用される。臨時・日雇い労働者の雇い入れ時教育の未実施は一刻の放置も許されない。

(2)自営業者、農民のいのちと健康を守る
1、09年度の特定健診・保健指導の全国平均実績値は、健康診断受診率40・5%、保健指導実施率13・0%であるが、すでに12年度までに国が定める受診目標、健診65%、保健指導45%をクリアしているところがある。1,794ある市町村国保のうち、上富良野町(北海道)をはじめ4保険者である。団体の取り組みでは、松本民商(長野)と松本協立病院が協働した力で高い受診率を上げている。
 高い受診率を上げている上富良野町、松川町(長野)、松本民商の特徴は、以下の通り。
 現地調査も含め、これらの教訓を全国センター通信や季刊誌等で発信し、普及していく。
@ 多様な学習機会を提供し、受診率を向上させている。
A くり返し住民の実態把握をつづけて効果的な保健指導が行われている。
 「血圧の高さやそのメカニズムは分かっても、背景にある住民の生活が分からなけれ ば、保健指導はできない。住民の実態把握を繰り返し続けることが、効果的な保健指導 を実施する最も重要なカギになる」としている。
B 主体的な意識を醸成する健康学習会を自治会単位で開催している。
 健康診断を「住民が主体的に自分の健康状態を把握し、生活習慣を予防していける力 量形成を支援」すると位置づけている。
C ボランティアの健康推進委員(松川町)や支部共済役員(民商)が奮闘している。
D 定期的な広報活動を重視している。
2、中小零細企業の安全衛生の実態を告発し、国や自治体に働きかけてゆく。
 全事業所の80・1%を占める9人以下の事業所(総務省「2006年事業所・企業統計調査」)の安全衛生の実態の公表を求めていく。
3、「地域で働く人々の健康づくり学習交流会」を12年3月17日、開催する。
 「学習交流会」は、業者、農民、家内労働者、零細企業で働く人など地域で働く人々の健康づくりを促進するために学び、交流する場と位置付ける。健康づくりの教訓や課題を明らかにする。
 具体的には、健康診断受診や保健指導実施の向上、有所見率の改善、健康チェックの普及、健康を担う活動家の養成などとともにアスベスト暴露への対応もテーマとする。
 全体を通して、地域で働く人々の健康づくりの契機としてゆく。


4. 被災者救済と補償

1、労災・過労死などの被災者救済と補償の取り組み
1、地方センターや加盟組合による被災者救済の取り組みは被災者や遺族の苦しみ、無念の思いに身を寄せる献身的活動であり、過労死認定基準改正の原動力ともなっている。
 全国各地で被災者救済の相談活動が取り組まれ、労災職業病裁判、認定闘争で貴重な到達点を築いている。原告勝利で確定した主な事案は次の通り。
@ 過労死・過労自死
イ、埼玉/ニコン派遣社員の上段勇二さん過労自殺事件裁判。最高裁不受理でニコンと請負会社の責任を認め、7050万円の賠償を命じた東京高裁判決が確定(9月)。
ロ、神奈川/富士通西垣和也さん急性薬物中毒死事案で過重労働による精神障害が原因との東京地裁勝利判決が確定(3月)。
ハ、山梨/鰹″H社・五十峯雄一さん心停止過労死事案。自宅残業を認め、甲府地裁判決が確定(8月)。
ニ、静岡/航空自衛隊浜松基地勤務の3等空曹の男性が自殺したのは先輩のパワハラが原因と認め8000万円の支払いを命じた静岡地裁浜松支部の判決が確定(7月)。
ホ、愛知/マツヤデンキ・小池勝則さん障がい者過労死裁判。最高裁不受理で、本人基準を認め名古屋高裁逆転勝利判決が確定(7月)。
ヘ、愛知/部活を公務認定、元教員が全面勝訴。名古屋地裁(6月)→基金は控訴。
ト、岡山/大井寛章さん、くも膜下出血の労災事案。広島高裁岡山支部勝利判決が確定(3月)。発症前2カ月の時間外労働時間が45時間以下でも11カ月前からの疲労の蓄積などを負荷要因として評価。
A 頚肩腕障害、腰痛、有機溶剤中毒、化学物質過敏症
イ、大阪/吹田市労連、ごみ収集作業中の腰痛。基金本部審査会で逆転勝利裁決(8月)。
ロ、岡山/岡山エア・ウォーター吉田隆栄さん、有機溶剤による化学物質過敏症の労災事案。広島高裁岡山支部で逆転勝利判決、確定(3月)。

2、一方、教職員の過重な超過勤務の是正を求めていた裁判で、最高裁が高裁判決を取り消し、原告敗訴となった事案がある。
 京都市教職員組合の組合員9人が月100時間前後の残業は安全配慮義務違反に当たるとして、慰謝料を求めていた問題で、7月12日、最高裁で判決が出された。判決は「安全配慮義務」が学校現場においても使用者にあることを明確にしつつも、「強度のストレスがあったとしても原告に(病気の)症状はなく、予見可能性はない」と指摘。慰謝料の一部支払いを認めた一、二審判決を取り消した。
 全教は同日、「教職員の長時間過密労働の是正に背を向ける最高裁判決に断固抗議する」との談話を発表。最高裁判決を「『命じていない』かぎり時間外勤務は存在しないという給特法の建前を理由に、教職員の無定量の長時間過密労働を容認する立場は、増え続ける病気休職者に見られるような教職員の実態からも認められない」「(管理職の安全配慮義務違反の否定は)教職員が長時間過密労働でたおれない限り、管理職の安全配慮義務が問われないというべき暴論であり、絶対に容認できるものではありません」と批判。「子どもたちのすこやかな成長と豊かな教育の実現をめざして、教職員の長時間勤務の解消とともに、教育条件の改善と給特法改正にむけた運動を強化する決意を表明」した。

3、労働者性をめぐる2つの事件(音楽家ユニオン八重樫さん事件、建交労INAXメンテ事件)で4月、最高裁がいずれも「労働者性あり」と判断した。「個人契約」で働く人は推計で全国に125万人と言われ、「偽装雇用」がはびこるなかで、労働実態を無視し、契約の形態だけで労働者性を否定することは許されないという司法の判断が定まったことの意義と影響は大きい。

2.被災者救済、予防活動などこれからの取り組み
@ 労働・職場環境が厳しさを増すなかで過労死・過労自死、腰痛などの労災・職業病の被災者、遺族の救済はさらに重視しなければならない。加盟単産、地方センターでは被災者・遺族の相談活動を強め、労災認定闘争を取り組むこととする。同時に被災者の救済に終わらせず、予防にむけた取り組みを重視する。
 全国センターはこれらの取り組みが前進するよう季刊誌、「通信」による事例紹介を行う。相談員のスキルアップのための研修会を検討する。認定基準を被災者本位に改めさせる取り組みを労働基準行政検討会を中心に進める。
A 「いの健」全国センターは、裁判・認定闘争をたたかう仲間、労働組合・団体の交流と学習の場として、労災職業病裁判闘争交流集会(「いのちと健康をめぐる裁判学習交流集会」)を2月11・12日、大阪市で開催する。集会では、裁判闘争の事例交流だけではなく、全国センター主催にふさわしく「健康で働くことを問う」ことや裁判闘争の持つ意味を明確にする内容とする。実行委員会を中心に準備を進め、被災者を出さない職場づくりの視点から労働組合の参加を積極的に呼びかけ、全国センター主催としては初めてとなる「学習交流集会」の成功を期する。


3、「厚労省が労災訴訟傍聴者の情報収集」に抗議
 厚労省が、国が被告になっている労災訴訟の傍聴者の情報を報告するよう全国の労働局に通知(「労災保険に係る訴訟に関する対応の強化について」2010年8月4日付)を出していることが7月7日の朝日新聞(東海版・関西版)で報じられたことから、第4回理事会名で抗議声明を発表(「通信」9月号で紹介)した。
 9月6日、厚労省へ「いの健」全国センター、日本国民救援会、全労連、自由法曹団4者連名の要請書を提出し、「通知」の撤回、監視の中止を要請した。
 この問題では千葉、神奈川、山梨、愛知の各地方センターが各県労働局への抗議、要請を実施した。


4、「過労死防止基本法」の制定を求める動き
@ 生きるために仕事した末に、死に追いやられる「カローシ」、健康被害は今も増え続け悲劇はなくなっていない。被害を予防するための基本法の制定を求める声が高まりつつある。
 こうしたなか、「全国過労死を考える家族の会」と「過労死弁護団全国連絡会議」が呼びかけ団体となって過労死防止基本法制定実行委員会が11月18日結成された。
 過労死防止基本法は、イ、過労死はあってはならないことを国が宣言する ロ、過労死をなくすための国・自治体・事業主の責務を明らかにする ハ、国は過労死に関する調査・研究を行うとともに総合的な対策を行う―という内容で、国や企業の責任を明確にして、対策を取らせるというもの。国や自治体が過労死予防の目標と計画を策定し、使用者に現行の法律を厳格に守らせる体制や環境をつくることで、長時間・過重労働の解消をめざすというのが趣旨である。
A 「いの健」全国センターは、長時間・過密労働の是正、過労死・過労自死のない職場と社会を実現する立場から、同実行委員会の目的に賛同し、100万人署名や集会への参加など「実行委員会」の取り組みに協力・連携し、この課題の実現をめざす。
B 「全国過労死を考える家族の会」代表・寺西笑子さんが、社員が過労死認定を受けた企業名を大阪労働局が開示しなかったのは不当として、国に不開示処分の取り消しを求めた行政訴訟の判決が大阪地裁であり、田中健治裁判長は「個人や法人の利益を害する不開示情報には当たらない」として、労働局の決定を取り消した(11月10日)。国は控訴したが、上級審で判決が確定すると、今後、従業員を過労死させる劣悪な企業を社会の目で監視し、過労死そのものの発生を未然に防ぐことができるようになる。「いの健」全国センターとして、原告、原告弁護団の要請に協力した取り組みを進める。



5. じん肺・アスベスト対策

 東日本大震災からの復旧・復興にむけ 被災地でのがれき処理作業や船舶解体作業が本格化している。防じんマスクの着用など安全衛生対策の徹底が求められる状況にある。

1、「じん肺・アスベスト被災者の完全救済と被害の予防体制確立」の到達点
@ アスベスト健康被害者を見つけ出し、補償、救済、健康管理へつなぐ活動として、北海道センターは4月16日、北海道民医連会館で建設労働者(元)を対象にしたアスベスト被害相談会を実行委員会主催で行った。面談相談者が予約の倍近い52件に上った。電話相談も当日だけで16件あり、事前相談を合わせると24件で、来場者とあわせ76件の相談があった。
A 建交労は10年末から11年初にかけ、各地で労災職業病健康相談会を実施、自治体や診療所の協力が得られた。富山ではNHK、新聞で紹介され県内9カ所に60人が相談に訪れた。1月19日には厚労省交渉を行い、じん肺診断結果証明書の「喫煙歴記入欄」削除の要求について、厚労省から「喫煙歴はじん肺管理区分判定に用いない」旨を事務連絡で指示したこと、労災補償特別支給金の廃止はない、等の回答を得た。
B アスベスト対策委員会が中心となって「東日本大震災後のアスベスト対策と、『石綿対策基本法』制定や石綿救済法の抜本改正要求実現にむけた運動課題の提起と各地・各分野の経験を交流する」ことを目的に、シンポジウム「大震災とアスベスト対策」を9月3日開催し、105人が参加した。
 森裕之・立命館大学教授が「震災とアスベスト対策」の演題で記念講演。これを受け、3人のシンポジスト(斎藤徳重・岩手建労会長、鈴木剛・じん肺キャラバン事務局長、岩國眞一郎・全労働中央執行委員)とコーディネーター(田村昭彦副理事長)による「被災地の現状と課題」をテーマにしたシンポを行い、フロア発言を含めアスベストの安全衛生教育の重要性が浮き彫りになった。
C 全国12地裁で係争していたトンネルじん肺根絶第3陣訴訟は、5月27日、東京地裁で第1次原告15人と被告ゼネコンとの間で、被告の法的責任と真摯な謝意を和解条項前文に明記した和解が成立した。以降、各地裁で和解成立が続いている。東京地裁での和解当日、「トンネルじん肺根絶基金制度」の創設、「トンネルじん肺救済法」の早期成立にむけた院内集会が開かれ、31人の国会議員と100人近い代理秘書が参加した。現職国会議員のトンネルじん肺根絶を求める賛同署名は587人にのぼっている(11月末現在)。
D じん肺キャラバン実行委員会による「2011年(第22回)なくせじん肺全国キャラバン」が10月3〜19日、全国各地で実施された。地方センターは各県実行委員会に積極的に参加しキャラバン成功のため尽力した。
 10月18・19日、全国の被害者が東京に集結し、院内集会や省庁要請、国会請願行動・デモを展開した。
 実行委員会としての提言を「じん肺根絶のために私たちの提言」にまとめた冊子が作成された。
E 「石綿救済法」は、通常国会閉幕近くになって時効について10年延長することで各党がまとまり8月26日、全会一致の改正となった。前進だが、補償金額の増額は実現されず、国の責任を明確にした石綿対策基本法の制定は今後の課題として残されている。
F アスベストによる健康被害について、国や建材製造企業の責任を問う裁判の審理が大詰めを迎えている。首都圏の建設作業従事者や遺族らによる集団訴訟は、横浜地裁の審理が12年1月13日に結審し、来秋にも判決が出される見通しになっている。同様の裁判が京都や北海道、大阪、九州でも提起されるなど、国の責任を問う声が各地に広がっている。
G 浜松市消防職員の「アスベスト公務災害認定取り消し事案」を審査していた地方公務員災害補償基金浜松市支部審査会(支部審査会)が11月14日、「本件疾病は公務に起因したものと認められるのが相当である」として、支部長(浜松市長)の処分は取り消されるべきと裁決した。これによって、浜松市消防職員のアスベストが公務災害であると認定された。
 事案はアスベスト曝露が原因で「右びまん性胸膜中皮腫」を発症し、06年1月に亡くなった浜松市消防士の遺族が、支部審査会に08年7月、公務災害認定を請求したところ、10年9月、「公務外」と認定されたため同年11月支部審査会に「処分の取り消し」を求めて審査請求していたもの。基金本部が「消防職員の認定については判断が難しい」(自治労連と基金本部との交渉で)と公言するなかで勝利した画期的な裁決といえる。
H 大阪・泉南アスベスト訴訟で大阪高裁が不当判決
 大阪高裁(三浦潤裁判長)は、国の責任を認めた大阪地裁判決を取り消し、原告の請求を棄却する不当判決を言い渡した(8月25日)。人の命より産業発展を優先する本末転倒の判決であり、原告団・弁護団は一致して最高裁に上告し、大阪地裁第2陣訴訟での勝訴と結んで早期全面解決を国に決断するよう迫ることとしている。
 「このような不当判決がまかり通れば、ひとり泉南アスベスト被害のみならず、国による人権侵害は、なべて救済の道を閉ざされ」る(8/29抗議集会決議)ことから、「いの健」全国センターとして、原告団・弁護団・勝たせる会のとりくみに連携・協力し、被害の早期救済・全面解決の世論と運動を広める。じん肺やアスベスト被害者の早期救済、被害根絶の運動と結合して取り組む。当面2月まで第2陣の大阪地裁にむけた署名に取り組む。3月28日に予定されている2陣判決後は、第1陣の最高裁に向けた取り組み強化のために首都圏での全国規模の報告集会を原告団や「勝たせる会」などと協力し開催する。
I 三菱重工のじん肺訴訟で山口地裁下関支部は6月27日、CT鑑定でじん肺を否定し原告の訴えを棄却した。じん肺法にもとづきエックス線検査でり患が認定されるのに、補助的なCT鑑定で認めないというのは暴論であり許されない。控訴審での勝利を確実にしていくために、連帯した取り組みの強化が求められている。


2、アスベスト健康管理手帳取得等の取り組み
@ アスベスト被害対策兵庫センターは、石綿荷役に関わった元神戸港湾労働者らの法律・医療相談会や訪問調査活動を実施し、被害の掘り起こしに取り組んできた。5月には、元港湾労働者 12 人が兵庫労働局に対しアスベスト健康管理手帳を集団申請し、全員に交付された。
A 北海道センターは7月、北海道労働局にアスベスト健康管理手帳交付状況に関する資料提供を要請した。それによると北海道では 2003 年から 10 年までに 645 件が交付され、 09 年( 156 )、 10 年( 167 )と2年連続で増加していることが判明した。
10 年、道労働局へ要請したが、道は医療機関の公募を行った。その結果、新たに3病院(JR札幌病院、勤医協札幌病院、十勝勤医協帯広病院)が指定され、全道で 17 病院となった。


3、じん肺・アスベスト対策でのこれからの取り組み
 泉南アスベスト訴訟大阪高裁判決を見ても、アスベストの危険性と国の責任を問う世論づくりが決定的に重要になっていると言える。
 「いの健」全国センターは、一つひとつの裁判闘争、被災者掘り起しや相談活動に全力をあげるとともに、じん肺やアスベスト被害者の早期救済、被害根絶、国の責任を明確にした石綿対策基本法の制定、労災認定に関する補償の改善要求をかかげ、環境省・厚労省への要請活動をじん肺キャラバン実行委員会などとともに取り組む。
6. 公務・公共サービスの充実、労働行政の拡充を求める活動

1、深刻な原発事故を引き起こす原因となった東日本大震災や、近畿地方を中心にじん大な被害をもたらした台風12号など、国民のいのちとくらしが脅かされる自然災害が続いている。
 こうしたなか、各地域での放射線測定や、除染作業、土砂ダムの監視といった直接的な対応をはじめ、震災で家や仕事を失った人たちへのさまざまな支援、防災対策の検討などに多くの公務・公共サービスで働く労働者が携わっている。
 しかし、政府や自治体は人件費削減の観点から職員の削減や新規採用の抑制を強める一方、労働者の安全や健康にかかわる重要な業務の外部委託化を進めている。また、これまで「効率化」の観点から外部委託していた業務(診療費の支払業務など)を「公益法人=天下り団体」とみなして、国の事務に再編する動きも広がっている。公務職場は今、人員の大幅な削減と業務量増大の狭間におかれ、過重労働が広がり国民への良質なサービス提供が困難な状況にある。憲法で規定されている生存権や勤労権など、さまざまな権利が保障されるためには、営利ではなく住民の幸せを追求する体制の確立とそれを支える人員の確保が必要だ。
2、政府は大震災の復興を口実にした公務員賃金の引き下げや国民への負担増、さらには「社会保障・税一体改革」による年金大改悪など大きな国民負担を進めようとしている。
 市町村合併や自治体リストラによる公務員削減、公務・公共サービの低下は東日本大震災で、初期段階における消防・防災システムの不備や「避難所格差」をもたらした。その中でも、多くの公務員労働者が、被災者救援・復興のために献身的に大奮闘している。公務員攻撃が国民全体に対する攻撃であることが、目に見える形で明らかになりつつあり、公務員攻撃を社会的連帯ではねかえす新たな条件が広がっていることに確信を持ち、力をあわせて奮闘することが求められている。
3、大震災や節電の影響により雇用失業情勢はいっそう深刻化するなど、急増する労働行政に適切に対応し、労働者・国民の雇用の確保・安定及び労働条件の確保・向上をはかることが強く求められている。にもかかわらず、4月には労働行政職員が136人削減され、政府の「新規採用抑制方針」により欠員状態までもが生じている。政府が今やるべきことは被災者本位の復興にむけて職員の緊急増員をふくむ行政体制の強化であり、国の責任を明確にした労働行政体制の整備・強化をはかることである。
 建交労は10年12月、18道府県労働局に対し、「地域主権改革」による労働行政の地方移管反対を申し入れ、労働行政関係職員増員と社会復帰促進事業の充実を要請した。また、いくつかの地方センターは労働行政拡充を求める労働局要請を実施した。これらの活動の教訓を生かし、12年度は“官民一体”となった取り組みをいっそう広げる。
 「いの健」全国センターは、国民のいのちとくらしを守る公務・公共サービスの拡充を求める全労連、国公労連、自治労連などの要求を支持する。全労働の「労働行政体制の拡充・強化」をめざす運動に協力・連携した取り組みを進める。



7. 国際連帯の活動

1、「世界労働安全衛生デー」が4月28日展開され、建交労が中央生公連とともに、厚労省交渉・宣伝行動、業界団体への要請などを実施した。「いの健」全国センターは、この取り組みに連携・協力し、厚労省への要請書に生公連、建設関係労組、首都圏共闘会議とともに名前を連ねた。12年度は「世界労働安全衛生デー」の取り組みが全国的にも展開されるよう、関係労組・団体との協議を進める。
2、ILO駐日事務所との協力関係をいっそう促進する。ティーセントワークを提唱したILOへの代表団の派遣、北欧での安全衛生活動の視察団について検討する。
3、韓国の源進職業病管理財団やグリーン病院など医療機関、研究所との交流を計画する。


V. 地方センターの確立・強化と全国センターの機能強化

1. すべての都道府県に地方センターの確立をめざす活動の到達点とこれからの取り組み

 すべての都道府県に地方センターを確立すること、これと一体に地方センターの活動強化をはかるべく、専任の事務局次長を配置するなど特別の体制をとるとともに、「地方センターづくりプロジェクト会議」を中心にこの課題を追求、促進してきた。空白県克服では地方センター結成にむけた条件の分析と対策、支援を中心に話し合い、具体的成果をあげてきた。

1、地方センター確立と活動強化にむけた取り組みの到達点
@ 地方センターの確立では医労連、県労連、民医連など関係者の努力によって8月、石川センターが 16 年ぶりに再建された。これによって「全国」センターに結集する地方センターのある都道府県が 24 に到達し、過半数となった。
 さらに全国センターには間接加入であった「はたらくもののいのちと健康を守るネットワークさが」(「ネットワークさが」)が、 10 月の総会で全国センターへの加入を決定した。
 空白県であった愛媛県と兵庫県でも近く結成の運びとなっている。
A 2月、京都市で第6回地方センター交流集会を開催し、 23 都道府県から 40 人が参加した。会議の 目的として「 活動の交流を通じて地方センターの役割を確認し、全体の活動の活性化をはかるとともに準備を進めている県への後押しになるような会議とする」ことをかかげた。
 討論と活動交流では、 被災者救済の活動など、地方センターがなくてはならない存在であることが確認された。労働局交渉など行政への働きかけにとりくんでいることや、相談事例から教訓を引き出し今後の取り組みにつなげていく事例検討会が積極的に取り組まれていることが語られた。すべての県に地方センターを確立する課題がブロックの課題としてとらえられていること、近畿、中四国など実際に取り組みが進められていることが報告された。
 地方センターの運動を担う人づくりが今後、さらに課題となる。活動経験を積んだOBの力の発揮を意識的に組織することが一つの教訓になっている。


2、全都道府県での地方センター確立にむけたこれからの取り組み
 2012 年度はすべての都道府県に地方センターを結成する目標の達成年次となる。地方センターづくりは「いの健」全国センター理事会の任務であること、「いの健」全国センターの組織建設上、最も中心的な課題であるとの位置付けをあらためて明確にし、最終年度にふさわしい取り組みを展開する。
@ 「いの健」センターのある都道府県が過半数となったことを踏まえ、これまでにもまして全労連(単産と県労連)、全日本民医連との連携・協力を強めることとする。
 労安学校の開催、メンタルヘルス不調への対応、労働相談センターや県労連との「相談事例検討会」など、「い の健」センターは“役立つ存在”だということを理解してもらうことが大切だ。
 ディーセントワーク獲得での 共同の前進、目に見える「いの健」運動の展開、季刊誌「通信」読者の拡大など 「いの健」全国センター、地方センターの社会的影響力を拡大し、“認知度”を高めていく努力も求められる。
A 第7回地方センター交流集会を2月 12 ・ 13 日、大阪市で開催する。全都道府県での地方センター確立の 方針を掲げてから5年間の節目となる集会であり、この間の到達点を確認し、全県での確立の意義や今日の情勢のもとでの全国センター、地方センターの役割を議論する機会としても位置づける。


2. 地方センターの活動の到達点と課題

1、地方センターの活動の到達点

1、相談者、被災者に身近な地方センターはなくてはならない存在だ。週刊誌の「女性自身」が“シリーズ人間”で「いの健」山梨センター事務局長の保坂さん(全国センター理事)をとりあげ、夫を心筋梗塞でなくした遺族の感謝の思いを引用しつつ、“正義の味方”“見返りを求めない、真のヒーロー”と紹介する特集を掲載した。こうした献身的活動は、保坂さんに限ったことではない。被災者救済に取り組む地方センターの姿がここにある。
2、労安活動や快適職場づくりなど労働組合の取り組みに具体的に協力・連携できるのも地方センターだ。各地で労働安全衛生学校、講座、セミナーなどが協力して取り組まれ成功をおさめている。北海道、宮城、千葉、東京などでは労働相談センター、県労連と「相談事例検討会」が開かれている。
3、ここに発展の芽が―各地方センターで次の活動が取り組まれていることは重要な到達点といえる。
@ 厚労省・労働局、自治体への要請が労働行政の拡充、石綿救済法の改善、労災補償行政などの要求で取り組まれていること。北海道、千葉(あやめ月間/6月、コスモス月間/10月)、東京、広島など。こうした活動は、総会方針の地方における実践であると同時に、「いの健」全国センター政策・制度要求実現の一環と位置付けられる。
A じん肺・アスベスト被害者の“掘り起こし”相談会が実施されていること。「労働相談110番」「過労死110番」「労災と公務災害110番」等の電話相談が実施されていること。
B 労働安全衛生学校、メンタル疾患、セクハラ・パワハラ対策の学習会や講座が取り組まれて成功していること。
4、ブロック、地方協議会でセミナーや交流集会が開催され、各県センターをつなぐ活動が活発化していることもこの間の重要な前進面である。
@ 2011年北海道セミナーが10月15日、札幌市で開かれた。85人が参加した。
A 関東甲信越連絡会による「第11回関東甲信越学習交流集会」が11月12・13日、新潟県で開かれ144人が参加した。
B 近畿ブロック学習交流集会が7月9・10日京都市で開かれ37人が参加した。 近畿ブロック各府県における「いの健」運動の前進と、それを担う「各府県センター」の確立と運動の発展をめざすことを目的にしたもので、全労連近畿ブロックと「いの健」センター近畿連絡会共催による初の学習交流集会となった。兵庫労連の代表から地方センター確立についての決意表明がされた。
C 第3回中四国ブロックセミナーが7月2・3日、山口県で開催され170人が参加した。
D 九州セミナー実行委員会主催による「人間らしく働くための九州セミナーin宮崎」が11月5・6日、宮崎市で開かれ、2日間で延べ1,000人が参加した。


2、地方センターの課題

 各地方センターは、限られた財政と体制のもとでも被災者の相談・救済活動をはじめ、「毎月ウォーキング」(大阪)、「春と秋のトレッキング」(広島)など健康増進のレクリエーション活動を取り入れるなど、それぞれ創意工夫しながら多面的な活動を行っている。より一層の発展をはかっていくうえで次の活動を強めることが課題となっている。
@ 県労連・地域労連、労働相談センター、民医連や医療現場、弁護士・法律事務所との連携をいっそう強化していくこと。
A 都道府県労働局など国の出先機関や自治体窓口との日常的な関係づくり。
B 会議の定例化、会員の拡大、財政確立。専従者配置などを含む体制の強化。
C 後継者づくり、次代の人材育成。 D 地方・地域で“目に見える「いの健」センター”をめざすこと。

3. いのちと健康を守る活動家の育成

1、安全衛生活動の促進と活動家養成を目的に、第7回労働安全衛生中央学校を6月11・12日、名古屋市で開催し、30都道府県から235人の参加を得た。日本医労連、自治労連、全教、全日本民医連からの参加が多くあり、全体として若い参加者が目立つ「学校」となった。
2、第8回労働安全衛生中央学校の開催にむけ、運営委員会を早期に立ち上げカリキュラムや講師陣などの準備を進める。
 「健康で安全に働くための交流集会」(健安集会)について、実行委員会を中心に準備を進め成功を期する。
 労安中央学校と健安集会の在り方、両者の関連や位置付けについて整理を進めつつ、「いの健」運動の系統的な活動家育成にむけた方策について理事会、四役会議を中心に議論を進めることとする。
4. 全国センターの機能強化と季刊誌・「通信」読者の拡大

1、全国センターは、第1回理事会で部会、委員会、検討会など重点課題を推進する体制を確認した。労働基準行政検討会、「精神障害判断指針」改正要求プロジェクト会議、化学物質ワーキンググループ、アスベスト対策委員会、地方センターづくりプロジェクト会議、地域共同部会、労働安全衛生中央学校運営委員会、広報委員会、季刊誌編集委員会、公務部会を設置し会議を開催してきた。春と秋、年2回の単産労安担当者会議を開催してきた。
 事務局の体制が強化されたことから事務局会議を定例化(月2回)し、諸課題の推進と調整を行ってきた。
 メンタルヘルス対策委員会のあり方について当該委員会、理事会で論議を重ね、同委員会の位置づけ・役割を明確にし、再編を行った。この例にならい、全国センターの各委員会、検討会等の位置づけについて今日の時点で改めて確認する作業が必要になっている。
2、これまで必ずしも十分でなかった学者・研究者、医者、弁護士、専門家などの結集をはかることが検討課題となっている。メーリングリスト作成、情報発信、研究会やワーキンググループの設置など12年度の課題として追求する。「申請・公募による研究・調査」など全国センター基金の活用を含め研究する。
 労働組合、民主団体、経営者団体(中小企業家同友会など)との関係強化、加盟促進をはかる。日本科学者会議との懇談、協力関係を追求する。個人会員の拡大に取り組む。
3、季刊誌・「通信」の読者拡大に通年的に取り組むとともに、年2回の読者拡大月間を設定してきた。「月間」では、宣伝誌紙の活用、宣伝チラシ、推進ニュースの発行等取り組んできた。
 季刊誌の読者数は11月末現在、1667で、うち有料購読者数は710、「通信」の読者数は同じく8065で、うち有料購読者数は1091の到達となっている。読者数は一進一退を繰り返し、有料購読者数を各々1.5倍化するという年間目標の達成には至らなかった。
 全国センターは、季刊誌編集委員会、広報委員会を中心に、読まれ・活用される季刊誌・「通信」となるよう内容上の一層の充実をはかる。
 読者拡大は特別の意識的取り組みが必要であることから、職場での安全衛生委員会活動の活性化や地方センターの財政確立への寄与、「いの健」全国センターの影響力拡大など読者拡大の意義について理事会、会員団体・労働組合、地方センターで議論すること、目標を持った取り組みとすることがポイントになる。
 機関紙誌読者数は「いの健」運動の社会的影響力をはかるバロメーターともいえる。読者拡大に通年的に取り組むとともに、春と秋の読者拡大月間を設定し集中的な取り組みを展開する。


 1年前の総会でかかげたディーセントワークの獲得は、今や労働組合運動の実践の課題となりつつある。また、30の地方センター確立が現実的日程に上りつつある。情勢は「いの健」センターが働くもののいのちと健康に責任を持つ組織、国民的共同の一翼を担う組織として大きく前進・発展することを求めている。“旗印は高く、旗竿は深く”情勢にふさわしい運動を展開し、働くもののいのちと健康を守る事業の新たな地平を切り拓こう。

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