全国センター第12回総会

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第12回総会決定集


第12回総会の概要
 働くもののいのちと健康を守る全国センター第12回総会は、2009年12月4日に東京の平和と労働センター2階ホールで行われた。
 総会には団体代議員129名中49名、個人会員代議員79名中5名、役員39名中32名の合計86人の総会代議員および役員が出席した。委任状は団体代議員53名、個人代議員31名、役員4名の合計90名から寄せられ、出席代議員・役員と委任状は176名となり、総会で議決権を有する代議員・役員247名の過半数を超えて成立し、すべての議案を満場一致で採択し終了した。
 開会あいさつは井上久副理事長が行い、議長には上田宗一代議員(国公労連)、佐藤誠一代議員(北海道センター)が選任された。資格審査委員は柴田和啓事務局次長、水落貴司代議員(全教)、鈴木明夫代議員(愛知センター)、議事運営委員は岩永千秋事務局次長、坂井志乃代議員(自治労連)、大角繁夫代議員(東京センター)が選ばれ任にあたった。
 福地保馬理事長は「全国センター設立10周年を迎え『すべての働く人々にディーセントワークを』の目標を掲げた」と述べ、「今回提案した政策・制度要求はその実現の第一歩である」とし、「単にスローガンにするのではなく、現実的具体的課題を追求しながら運動をすすめていこう」とあいさつした。  来賓の日本共産党・吉井英勝衆議院議員は、「あらたに民主党政権が発足したが、マニュフェストで謳っていたアスベスト新法の改善に後ろ向きになりつつある」、「いまこそ国民の運動が大事。みなさんと手を携えて運動していきたい」とあいさつした。
 さらにILO駐日代表、ライフリンク、労働科学研究所、全建総連、全農協労連、全国保険医団体連合会、過労死弁護団全国連絡会議、日本共産党・高橋千鶴子衆議院議員からメッセージ・祝電が寄せられ紹介された。
 活動方針案を提案した今中正夫事務局長は@働くものの健康破壊がいっそう深刻になる一方、国民の怒りが民主党中心の政権をつくりだした情勢、A職場で健康と安全を守る活動の推進や労働災害被災者救済など今期のとりくみの総括、B職場、地域で働く人びとのいのち、健康を守る共同の輪を広げる今後1年間の活動方針案、働くもののいのちと健康を守る政策・制度要求案、09年度決算報告案、10年度予算案などを提案した。会計監査報告は菅田敏夫会計監査から、新年度役員の推薦提案は岩永千秋事務局次長から行なわれた。
 討論では大阪・泉南のアスベスト訴訟勝利へ向けた活動など18人の代議員が発言(全国センター通信1月号、3〜5面に掲載)。討論のあと今中事務局長より総括答弁が行われ、活動方針案、新役員選出案、10年度予算案などすべての議案が満場一致で採択された。
 第6回働くもののいのちと健康を守る全国センター賞は、日本医療労働組合連合会に贈られた。
 冨田素實江理事より特別決議「労働災害・公務災害不服審査制度の改悪に反対し被災者・遺族本位の審査を求める決議」が報告され満場一致で採択された。
 閉会あいさつは長谷川吉則副理事長が行い、すべての議事を終了した。


第12回総会活動方針

目次

はじめに

T .10年たった全国センター

U.私たちをとりまく情勢

  1. 政治・経済をめぐる情勢
  2. 破壊されるいのちと健康

V.1年間の活動の総括

  1. 職場、地域で働くもののいのちと健康を守る活動をさらに前進させよう
  2. 被災者救済のとりくみ
  3. アスベストのとりくみ
  4. 労働安全衛生の活動家育成
  5. 組織の拡大、強化

W.今後1年間の方針

  1. 職場、地域で働く人びとのいのち、健康を守る共同の輪を
  2. 活動家づくりを進め、「いの健」運動を大きく発展させる
  3. 全国センター政策・制度要求の実現

はじめに

 9月に全国センターは10周年記念行事を行いました。私たちは記念シンポジウムや祝賀会に参加された多くの人びとから励ましの言葉をいただきましたが、10年に及ぶ働くもののいのちと健康を守ってきた事業に確信を持つと同時に、さらに前進する決意をかためあいました。
 シンポジウムでは福地保馬理事長が基調報告を行い、全国センターのこの10年間のとりくみの成果が労働組合、中小業者、被災者・家族、弁護士、医療従事者、研究者、地方センターなどの協同した事業でもたらされたことなどを明らかにし、今後の課題として@ディーセントワークの実現、A非正規労働者、自営業者、農漁業者、外国人労働者、失業者を含めてすべての働く人びとの健康問題を視野に入れる、B職場に地域に働くもののいのちと健康を守る主体の形成を提起しました。
 時あたかも未曾有の経済危機が世界をおそい、戦後のほとんどの時期に政権を担ってきた自民党が総選挙で大敗し、民主党を中心とした政権が生まれました。政治、経済が大きく変動している新たな情勢のもと、私たちの役割はますます大きくなっています。
 とりわけすべての都道府県に地方センターを確立する目標の達成など、新たな10年にむけさらに共同の力を大きくし奮闘していかなければなりません。
 今総会はそのような私たちの今後1年間の活動方針を決める重要な総会です。また全国センターとしてはじめて政府に要求するための政策・制度要求(案)を提案します。これは働くもののいのちと健康を守る要求を積極的に行政に申し入れ、社会にもアピールし、粘り強くみんなで要求実現に向け奮闘していくことがねらいです。
 積極的な討議をお願いします。


T.10年たった全国センター

 働くもののいのちと健康を守る全国センター10周年記念シンポジウムが9月11日、平和と労働センター・全労連会館で開かれました。また季刊誌「働くもののいのちと健康」41号(10月号)を記念誌として発行し、10周年記念シンポジウム「働くもののいのちと健康を守るとりくみの歴史と今後の課題」を中心にした特集を組みました。当日は約100名が参加し、組織内外から多くのメッセージをいただき、全国センターの10年と今後の発展に確信を持つことができました。
 シンポジウムでは「働くもののいのちと健康を守る取り組みの歴史と今後の課題」で福地理事長が基調報告を行い、日本医労連、全国じん肺弁護団連絡会議、化学一般労連、全国過労死を考える家族の会が「補償から予防へ」テーマに報告を行いました。京都センター、広島センター、高知センターは、「全県に地方センターを」の視点から報告を行い、最後に全労連の小田川義和事務局長が「働くものに憲法を 日本での『ディーセントワーク』実現を目指す全労連のとりくみ」と題して講演しました。10周年記念祝賀会を含め、参加者は10年の歩みを振り返り、全国センターの新たな発展を誓い合いました。

U.私たちをとりまく情勢

1.政治・経済をめぐる情勢

 小泉元首相などの自公政権の新自由主義にもとづく「構造改革」は、国民を貧困化させ格差社会を深刻にし、働かせ方を一変させました。強い者をさらに強くするため弱い者を切りすてる政策のもと、大企業は「儲けのためには何をしてもいい」といわんばかりに、人間を人間とも思わないやり方で派遣労働を解禁し「派遣切り」「下請け切り」など反社会的な行為を強行してきました。その結果、失業者や非正規労働者が急増し、低単価や工期の短縮などの中小業者いじめはますます激しくなり、長時間労働、パワハラなどハラスメントの蔓延で、自殺などメンタルヘルス不全の急増など働くもののいのちと健康もいっそう悪化しました。
 しかし2009年8月末の総選挙の結果、国民の怒りで自民・公明政権が退場し、民主党中心の三党連立政権が誕生しました。同時に「100年に一度」と言われる世界的な恐慌、経済危機が進行しています。相対的貧困率は15.7%、失業者の急増など国民生活はますます困難になっていますが、まさに今こそ製造業への派遣の禁止、登録型派遣の原則禁止など労働者派遣法の抜本改正を求めるたたかい、最低賃金時給1,000円の実現、雇用の確保、ディーセントワークの実現、後期高齢者医療制度の廃止など国民生活向上を求めるたたかいが重要です。
 また連立政権の公約に登録型派遣や製造業派遣の原則禁止、派遣先に直接雇用させる「みなし雇用」の導入などが盛り込まれ、厚生労働省労働政策審議会で労働者派遣法改正に向けた議論がはじまっています。しかし、財界・大企業が改正反対の巻き返しを強め、審議会でも公益委員から改正に背を向ける発言が出される状況があります。広範な勢力と手を結び、働くもののいのちと健康を守る社会を求め、さらに奮闘しなければなりません。

2.破壊されるいのちと健康

 (1)精神疾患の急増
 昨年末から年始のかけての「派遣村」のとりくみは、派遣労働者の困難を目に見える形で社会に示しました。その後も失業者の急増など雇用の崩壊、生活もなりたたない低賃金、夜勤や長時間労働の蔓延など、日増しに働くものの困難は深まっています。私たちがこれまで経験したことがないような経済危機の中で、さらに「うつ病」など精神疾患が大量に発生するなど、働くものの心と体はますます蝕まれていくことが予想されます。
 厚労省の2007年度の労働者健康状況調査では「強い不安、悩み、ストレスがある」とした労働者は58%にのぼります。
自殺者は3万人を超える事態が1998年以降続いています。自殺に大きく関連する「うつ病」など精神疾患も増え続けています。精神障害に関する労災申請は2004年度は527件(うち認定130件)でしたが、2008年度は過去最高となり927件(うち認定267件)と急増しています。2008年度の過労自殺は申請148件(認定66件)ですが、2004年度が申請121件(認定45件)であり明らかに増加傾向です。しかも労災申請に至るケースは限られており、「氷山の一角」です。
 ハラスメントも精神疾患の大きな要因です。兵庫県や大分県などでハラスメントの防止指針が出されましたが、多くの事業所で看過できない状況になっていることを示しています。
 私たちの相談窓口にもっとも多く寄せられるのが「うつ病」ですが、成果主義賃金、長時間労働やハラスメントを背景として増え続けています。産業カウンセラー協会の「経済危機と職場の現状に関するアンケート」(2009年5月)では、「メンタルヘルス不調者の増加」が70.6%、「職場のモチベーションの低下」66.9%、「職場の人間関係の悪化」が50.0%、「パワハラの増加」が37.5%などとなっており、今回の経済危機が働くものの健康にも悪影響を及ぼしていることが明らかになっています。
 しかし職場でのメンタルヘルス対策の不備や、「うつ病」を労働関連疾患として診療し職場復帰まで助言や治療ができる医療機関が少ないことなど、課題も少なくありません。同時に収入が絶たれ休養が必要なのに無理して働き、増悪させるケースが少なくありません。労災で休業中なら解雇できませんが、それ以外は休職期間の「満了」についての法的な定めがないため療養中に解雇になるケースが後をたちません。医療体制の整備や休業中の生活保障、私病でも療養条件の保障など総合的な対策が必要になってきています。

 (2)脳心臓疾患やその他の職業病
 働くものの困難を反映して、定期健康診断結果(50人以上の企業、厚労省発表)の有所見率は2008年度には51.3%と、過半数を超えました。さらに中小業者の有所見率は81.8%(全商連共済会の調査)と、きわめて高くなっています。「2008年人間ドックの現況」(人間ドック学会・日本病院会)によれば、調査対象者295万人のうち「異常なし」は前年比2.2%低下し9.6%にすぎません。
 2008年度の脳心臓疾患の労災申請は889件(認定377件)で、ここ数年高い水準で推移しています。脳心臓疾患による過労死は申請304件(認定158件)ですが、過労自殺を上回っています。過労死は50歳代に多いという特徴がありますが、30歳代に多い過労自殺と同様、長時間労働や仕事でのストレスを背景としており、人間らしい労働、働きやすい職場づくりがきわめて大切であることを示しています。
 業務上疾病(休業4日以上)は2008年度では8,874人となっていますが、福祉労働者などの頸肩腕障害・上肢障害、交通労働者などに多発している腰痛、派遣労働者、下請け労働者などの化学物質による健康障害、VDT障害、職業がんなども注意を要します。

 (3)不十分な健康対策
 厚労省の「2007年労働者健康状況調査」によると、法による定期健康診断を実施している事業所は86.2%ですが、一般職員の4分の3以上働くパートタイム労働者では41.1%です。法で義務づけられた長時間労働者への医師による面接指導を「知っている」とした事業所は45.6%にすぎません。1000人以上の事業所ではほぼ100%が「知っている」ですが、10〜19人では39.6%にすぎません。事業所規模が小さくなるにつれ低くなります。そして実際に面接指導を実施した事業所は全体で12.2%にすぎません。さらにメンタルヘルスケアをとりくんでいる事業所は全体で33.6%ですが、これも事業所の規模が小さくなるにつれ低くなります。
 労働安全衛生対策については、不十分ながら法的な制度や規制がありますが、それさえも職場を基礎とした働くもののたたかいや行政からの指導強化なしには進まないことを示しています。

 (4)アスベストによる健康被害
 厚労省の報告によると2008年度までに労災保険あるいは石綿救済法による特別遺族給付金の給付を受けた人は、肺がんで1,725人、中皮腫で2,969人となっています。環境省によると石綿救済法の救済給付を受けている生存者(医療費など給付)は、中皮腫1,948人、肺がん495人です。特別遺族弔慰金などを給付された遺族は中皮腫で2,813人、肺がん128人となっています(9月29日現在)。
 しかし厚労省の人口動態統計によれば、1995年から2008年だけでも中皮腫で亡くなった方は11,212人であり、多くの方が補償も救済も受けずに亡くなっています。中皮腫の2倍は被害があるとされる肺がんに至っては、さらに多くの被災者が救済されていません。政府はこの間、石綿救済法の手直しを行い石綿肺も救済するとしていますが、多くの被災者・遺族は救済されていない現状があります。
 また石綿ばく露作業に従事し離職後に健康被害が出る可能性のある労働者に交付され年に2度検診が受けられる石綿健康管理手帳は2007年度末で、12,095人に交付されているにすぎません。本年4月に職業性間接ばく露(周辺業務)でも交付が受けられるようになりましたが、「一人親方」にも交付すること、受診できる医療機関を増やすことなど改善が必要です。
 地域でのばく露については尼崎などの地域では「調査」と称した検診を行っていますが、希望者のみの部分的なものにとどまっています。
 アスベストは1,000万トン輸入されその多くが建築物に使われました。建築物解体等による飛散防止は大きな課題ですが、その対策は遅れていると言わざるを得ません。大量に使用されたアスベストの除去・廃棄、アスベスト含有建築物等の解体が今後急速に進んでいきます。しかし現状ではアスベスト労働安全衛生法・石綿障害予防規則及び大気汚染防止法による規制が十分行われていません。衆議院調査局環境調査局の調査によれば、「石綿含有建材の廃棄物に係わる不正処理事案は約1割の自治体が「ある」と回答していますが、解体現場等での不適正処理事案の把握は、立入検査権限等が複数の部局にまたがっていることもあり、約8割の自治体が把握していない状況にあり、今後、その把握率を向上させていく必要がある」としています。
 また省庁間の連携に関しても、先の衆議院調査局は「自治体及び労働局(労働基準監督署)が有している権限や立入検査時期は異なっている。しかし、今後は、両者の連携協力が一層求められているところである。自治体及び労働局の合同立入検査は都道府県で約7割、石綿健康被害者に関する両者間の情報交換は都道府県で約4割となっており、自治体と労働局の合同立入検査や情報交換の分野での更なる連携協力関係の構築が必要である」と指摘しているほどです。
 省庁間の連絡体制を密に総合的な対策を国にとらせる必要があります。また建物の検査や解体などのアスベスト除去対策に一部の自治体では補助金や融資の制度を持っていますが、国の制度はきわめて不十分です。

 (5)労働災害
 2008年度の労働災害による死亡者数は1,268人(前年比6.6%、89人減)、重大災害(一度に3人以上の死傷者)は293件(前年比4.1%、4件減)でした。派遣労働者の労働災害(休業4日以上の死傷者数)は5,631件(前年比4.3%減、254件減)ですが、製造業の派遣労働者の労働災害は2,965人で前年の2,703人を上回りました。
 派遣、下請けなど非正規雇用の労働者、青年労働者は労災申請を阻害されるケースが多々あり、違法な「労災かくし」が後を絶ちません。労基法104条にもとづく申告や安全配慮義務違反の摘発を含め、働くものの立場に立つ労働行政に働きかけることが急務になっています。


V. 1年間の活動の総括

1.職場、地域で働くもののいのちと健康を守る活動をさらに前進させよう

 (1)職場で健康、安全を守る活動の推進
 この1年間、国公労連が「第1回労働安全衛生活動交流集会」、日本医労連が「第3回労働安全衛生活動全国交流集会」、化学一般が「第28回労働安全衛生1泊学校」、新聞労連が新型インフルエンザをテーマに労安学校、自治労連が「第18回自治体労働者労働安全衛生・職業病全国交流集会」を開催しパワハラ・セクハラアンケートを行ったこと、生協労連が「第10回いのちと健康を守る交流会」を開催しました。また福祉保育労は「健康カレンダー」を作成、全教が「教職員の長時間過密労働の深刻な実態を改善するために」の提言をまとめ、JMIUが秋闘に労安の要求をかかげ5年になったことなど単産でのとりくみが前進、定着しつつあります。
 地方センターでも「第5回働き方を見直す京都7月集会」が行われるなど、職場で労働安全衛生を根付かせるとりくみが前進しました。
 全国センターは全労連主催の「いのち・健康・安全を蝕む深夜労働を告発するシンポジウム」(4月25日)、「24時間型社会から人間らしい労働へ〜夜勤労働規制強化を求める集い」(10月3日)の協賛団体となり、積極的に参加しました。
 また全国センターは、全国安全週間(7月1〜7日)にあたって「安全衛生活動なくして労働者のいのちと健康は守れない」、全国衛生週間(10月1〜7日)にあたって「安全衛生活動を強め働くものの健康を守ろう」を発表し、職場でのとりくみの強化を呼びかけてきました。
 今期、事業所健康診断調査を行いました。200を超える単組・職場からアンケートが寄せられましたが、健診結果を安全衛生委員会で検討している事業所が少ないこと、産業医の提言がない職場が多いことなど、疾病の予防や職場全体の健康づくりに活かされていない実態が明らかになりつつあります。
 情勢で述べたように働くもののいのちが脅かされ健康破壊が進行し、さらに派遣など非正規雇用や中小零細企業の労働者は法にもとづく労働安全衛生活動によって保護されていないこと、単組、職場段階ではメンタルヘルス対策などの労安活動はまだ多くのところで定着したとはいえないことなど、この分野での活動がさらに活動を強化することが求められています。
 メンタルヘルス対策委員会は、メンタルヘルス対策に焦点を当て、@昨年の京都集会での問題提起の実践の交流、A単産を超えた単組、職場の交流、等の内容で来年交流集会を開催することとし、準備を進めています。
 10月1日からはじまった「第20回なくせじん肺全国キャラバン」は10月15〜16日に東京集結行動を行い、集結集会に300人、請願デモに700人が参加しました。
 「じん肺、アスベスト被害を根絶しろ」の要求をかかげ、国や被告企業に向け行動を展開しました。

 (2)不安定雇用労働者の健康、安全問題
 各単産、各地方センターでは健康問題を含む労働相談が激増しています。たとえば、私たちが積極的に参加した中央、地方での「派遣村」では、「派遣切り」など生活や雇用のきびしい実態とともに、「うつ病で休業中に解雇された」など健康問題でも多くの相談が寄せられました。
 全労連非正規センターなどともに昨年からとりくんだ「青年の労働と健康実態調査」は3,263人の有効回答を得て、一定の分析をしました。男性の4人に1人、女性の3人に1人が「とても疲れる」とし、「強い不安・悩み・ストレス」として、「仕事の量」「仕事の質」「会社の将来性」をあげる人が30%を超えました。健康状態について「不調である」と答えた人は約20%でしたが、週80時間以上働く人では41.5%となります。傷病による休暇・休業では、病気になり休んだ非正規労働者の24.6%が「休んだために給与がなくなった」と答えるなど深刻な事態が明らかになっています。また50%以上の労働者に「抑うつ傾向」が見られ、長時間労働者ほどその傾向が強く見られました。これから報告書にまとめられる予定ですが、青年の健康問題も重要課題であることが明らかになっています。
 青年が多くを占める非正規や下請け労働者では、法による安全対策がとられないまま危険な作業が行われていますが、青年に憲法や労基法、労安法などにもとづくもとづく権利が十分知らされておらず、それがいのち、健康の破壊につながっています。学習する機会を多く持つこと、事業主に自らの権利を主張できるようにすることなどが課題となっています。
 また宮城では県労連の相談センターとともに事例検討会を行っていますが、雇用、生活問題などと健康問題が密接に絡み合っている現状では、他の分野と協力して働くものの相談に対応することはきわめて大切なとりくみです。

 (3)特定健診・保健指導等への対応
 全国センターは11月7日、東京で第3回特定健診・特定保健指導検討集会を開催し、業者、医療関係者、自治体労働者など41名が参加しました。
 特定健診・特定保健指導制度は、無保険者は排除され、被扶養者の受診が困難であること、保健指導の実施率もきわめて低いなど、多くの問題点が明らかになりつつあります。「健康自己責任論」にたったハイリスクアプローチのみのこの制度を見直し、労働、環境、社会的要因を重視し、ヘルシーカンパニー、ヘルシーシティなど世界の到達しているヘルスプロモーションの政策を実現することが求められており、職域では労働安全衛生法にもとづく事業主の安全配慮義務を果たさせること、地域では健診を受けられない人をなくすことや、『健康日本21』にもとづく健康づくりなどこれまでの自治体の保健予防のとりくみを後退させないことなど、健康であることは権利であるとの立場からとりくみを進めていくことを確認しました。

 (4)中小零細企業等での労安活動
 所沢市で埼玉センターも参加した地域・職域連携会議が設置され、中小零細企業など地域で働く人びとも含めた地域住民の健康づくりが進んでいます。さらに土建組合や民商と民医連病院、診療所の連携した健診などの健康管理のとりくみが進んでいます。しかし、圧倒的に多くの働く人びとは、中小零細企業で働く人です。経済危機で営業や生活が困難になる中、農民なども含め、中小零細企業等での労安活動が強化されるよう行政等に要求することを含め、とりくみを強化することが求められています。

2.被災者救済のとりくみ

 (1)精神障害判断指針、心理的負荷表改定をめぐるとりくみ
 厚労省は昨年12月に「職場における心理的負荷評価表の見直し等に関する検討会」を発足させました。これに対し全国センターは、2月6日に厚労省及び検討会委員に対し、「職場における心理的負荷評価表の見直し等に関するお願い」の文書を提出し、「心理的負荷の強度Vの項目を増加させること」、「慢性ストレス、長時間労働に関する評価基準を設けること」などを働きかけました。そして検討会の報告がまとめられ、4月に「心理的負荷による精神障害等に係る業務上外の判断指針の一部改正について」(基発第0406001号)が各都道府県労働局に通知されました。しかし、心理的負荷評価表の具体的出来事に「ひどい嫌がらせ、いじめ、又は暴行を受けた」(パワハラなどハラスメント)を「強度V」で加えたことは評価できるものでしたが、全体として現行の「判断指針」を「妥当なものである」とし、心理的負荷評価表の追加だけですませたきわめて不十分な改定でした。
 この新たな心理的負荷表について4月10日、全国センターは、厚労省から説明を受けました。しかし厚労省は金谷過労自殺福岡高裁判決、中部電力過労自殺名古屋高裁判決で指摘された「過重性を1つ1つを切り離さず総合的判断すること」、「長時間労働を評価すること」、「うつ発症後の過重労働を評価すること」などが、今回の改定でどう考慮されたか、という私たちの質問にはまともに返答できませんでした。
 全国センターは「精神障害判断指針の抜本的な改正を−厚労省の「一部改正」では被災者・遺族の救済は進まない」の事務局長談話を出しました。ハラスメントを「強度V」に認めさせたことは大きな成果でしたが、抜本的な改正を求め、引き続きたたかことが必要です。

 (2)労災不服審査制度改悪反対のたたかい
 労働災害・公務災害不服審査制度の改悪案である行政不服審査法「改正」案、労働保険審査官及び労働保険審査会法「改正」案、地方公務員災害補償法「改正」案が昨年の第169国会に上程され、全国センターは、廃案を求める議員へのファックス運動などにとりくみ、継続審議を勝ちとりました。この「改正」案は「簡易迅速な救済の確保」のために「審理の1段階化」をはかるとしていますが、現在2段階である労働災害、公務災害の不服審査は「中央に1段階化」され、都道府県段階の審査機関である労働保険審査官制度、基金支部審査会はなくなるなど、被災者・遺族の権利を大きく制限する改悪案です。国会解散がいつ行われるか分からない情勢でしたが、@継続審議となっている「改正」案が第171国会で審議され成立する可能性は否定できないこと、A不服審査制度の改悪に反対し制度改善を求める運動を継続し強めていくことが必要という判断から、理事会は署名運動を提起しました。
 その結果、33,000筆の署名を集約し国会請願しました。「改正」案は7月21日の国会解散とともに廃案となりましたが、民主党政権がこの法案をどう扱うか、今のところ明らかでありません。引き続き反対運動が必要です。

 (3)過労自殺など被災者救済のとりくみ
 この1年、セイコーエプソン過労死事案、新潟県職員大橋さんの過労自殺事案が支部審査会で公務上認定(1月)、北海道の音更農協職員の過労自殺事案の損害賠償請求で勝利(1月)、芸能実演家の労働者性を争ったマッスルミュージカル団員の労災認定(2月)、千代田梱包のパワハラ事件による過労死事案、愛知のソフトバンクの小出さん過労自殺事案の損害賠償請求で勝利和解(名古屋高裁、6月)、派遣労働者の上段さんの過労自殺事案の東京高裁での勝利(7月、損害賠償請求、被告は上告)、宮城の佐川急便に派遣された労働者の過労自殺が労働保険審査会で労災認定、静岡の尾崎善子先生過労自殺事案の勝利確定(10月、基金の上告を最高裁が棄却)など貴重な成果がありました。以上の事案は「全国センター通信」に寄せられたものが中心ですが、これ以外にも貴重な成果がありました。
 また山口センターで鉛中毒の労災申請、さらに当該企業に健康管理や作業管理など安全衛生対策が確立するよう指導を求め、労基署に「申告」するとりくみが行われました。派遣や下請け労働者に労働安全衛生対策なしに危険な作業を行わせる例が後を絶ちませんが、このようなとりくみは重要です。
 特に派遣労働者の過労自殺事件の勝利は重要で、私たちを励ましてくれました。また、過労死の認定基準では、80時間基準がしばりとなって不当な決定が労働基準監督署段階で出ていますが、昨年の鹿児島地公災・県教委職員急性心筋梗塞死(内之浦町教委)事件のように、最高裁判決で「時間外労働時間数にこだわらない判決」が確定し、その後の裁判でセイコーエプソン、千代田梱包の過労死事案などでつぎつぎ勝利しましたが、この基準を超える判断が行政裁判で確定していることは重要です。過労死認定基準の改定要求を急ぐ必要があります。
 また全国過労死を考える家族の会は過労死を発生させた企業名などの公表を求めて、厚労省などに対し要請行動を行いましたが、過労死を根絶する重要なたたかいです。
 09年度係争事案調査は17の加入組織から120の事案が寄せられましたが、疾病分類では精神障害がもっとも多く50件(昨年35件)で、うち過労自殺が25件(昨年26件)を占めました。脳心臓疾患は30件(昨年39件)で、うち過労死は17件(昨年は27件)でした。私たちがとりくみを進めている事案でも、精神障害が急増しています。
 どの段階で係争となっているかでは、労働保険審査会が昨年26件から今年10件と減りました。その反面、審査官段階が5件から15件、地方裁判所段階が21件から32件と増えています。労働保険審査会での事案処理はこのところ迅速になりましたが、その分地方裁判所で争うケースが増えていることを示しています。

 (4)労働行政民主化のとりくみ
 東京センターのとりくみで厚労省が労基署の窓口業務改善のリーフレットを作成することとなり、全国センターは労基署受付窓口の対応についてアンケート調査をし「請求・申請もれがないようチェックシートを作成すること」「労災申請を阻害するような厳に慎むこと」などリーフレットに盛り込むべき5項目の改善要求をまとめ、2月に厚労省に申し入れました。その結果、厚労省は新しいリーフレット『労災保険:請求(申請)のできる保険給付等』(15ページ)を作成し10月末に全国の労基署に配布しました。
 また全労働の呼びかけに応え、都道府県労働局のブロック機関化、ハローワークの縮小反対、労働行政の拡充強化を求める「団体署名」にとりくみました。

 (5)地公災基金へのメリット制導入反対のとりくみ
 また地方公務員災害補償基金は来年度から過去3年間の収支によって各支部の負担金を増減させる「メリット制」を導入しますが、「公務災害かくし」につながるとして、公務部会を中心に拙速な導入に反対する申し入れを基金本部、東京、大阪、茨城などの基金支部に行いました。

3.アスベストのとりくみ

 この一年間、アスベスト被災者への補償・救済、健康管理、被害の予防対策の拡充について、各地のとりくみが大きく前進しました。
 尼崎ではクボタを相手取り、地域でのばく露(公害型)と職場でのばく露(労災型)の訴訟が進行しています。大阪の泉南国賠訴訟では、1月に30万署名運動がスタートし、法廷内外で大きくたたかいが前進しています。また首都圏建設アスベスト訴訟は、提訴1周年総決起集会が5月21日に開かれ1100人が参加しました。200万署名運動など勝利に向け大きく前進しています。さらに7月7日、中電アスベスト訴訟が名古屋地裁で勝利しました。安全配慮義務違反を認め、3000万円の支払い命じる判決で、昭和30年代、じん肺施行の昭和35年4月より前から被害が予測できた、とした点で画期的です。
 また国労等のとりくみですが、昨年12月25日、旧国鉄・JRを相手取り安全配慮義務等で争ったアスベスト訴訟で2人の原告が横浜地裁で勝利しました。原告に@哀悼の意を表する、A補償制度の適切な運営、補償制度、健診制度の周知に努める、B解決金として1700万円の和解を勝ちとりました。これにより4月からアスベスト被害でなくなった遺族に対する1000万円の補償金一時金制度が発足するなどアスベスト対策が前進しました。
 香川のリゾートソリューションのたたかいでは、1000万〜2500万円の慰謝料など和解案が9月14日に高松地裁から示され28日に和解し、原告側の勝利となりました。さらに香川では6月7日に「アスベスト問題を考える香川集会」が開かれ、230人が参加しました。
 全国センター公務部会は、この間、「公務の実態に応じたアスベスト認定基準の変更」や教員のアスベスト被害の実態調査、希望者への検診など、アスベスト対策の強化を求めて政府への要請を続けてきました。滋賀の教員で中皮腫で亡くなった古澤先生の公務災害認定など、低濃度の間接ばく露での健康被害を求め、現在、地公災基金当ての署名運動にとりくんでいます。
 各地のとりくみでは、高知センターが継続的に相談活動にとりくみ、70年前の軍艦製造(三菱重工業)での被ばくでの石綿肺で労災認定をかちとるなど成果をあげています。福岡では相談活動とともに対県交渉や健康管理手帳の取得運動にとりくみ、指定医療機関を増やすことに成功しました。その他大阪や愛知、広島、山口など全国各地でとりくみが前進しています。
 各団体のとりくみでは、全日本民医連が肺がん患者のCTやレントゲン写真の再読影のとりくみを全国規模で行いました。1000例に近い読影から約13%に胸膜プラークなど石綿関連所見が見られることを明らかにしました。このとりくみは、アスベスト被害の実相を示すものとして学会やマスコミからも注目を集めています。
 全国センターは、7月16日、@石綿肺など対象指定疾患を増やすこと、A中皮腫や肺がんの認定のための医学的な判定方法など、石綿救済法の改善を求め環境省交渉を行いました。第2項目は、公害健康被害補償不服審査会が肺がんや中皮腫であることが否定できない場合は支給せよと9件の不支給処分を取り消したことを指摘し、この決定にもとづき判定方法を変えことを求めるものでした。環境省は石綿肺を指定疾病にするとを示唆しましましたが、第2項目目については「判定方法は変えない」と不当な答に終始しました。
 また10月16日の第20回じん肺キャラバン実行委員会による厚労省・環境省交渉では、健康管理手帳の指定医療機関を増やすこと、石綿救済法を改善し給付内容を労災補償と同等とすること、などを求めました。
 全国センターは、10月31日、東京で「アスベスト健康被害の補償と根絶を求める全国交流集会」を開催し、全国各地から81名が参加しました。この集会では、国と石綿関連大企業の責任を明らかにしたアスベスト対策基本法、救済基金などの創設を求めるなど今後のたたかいの方向性を確認するとともに、当面する泉南アスベスト訴訟(来春3月判決)で勝利することなど裁判闘争での前進、被災者を見つけ出し救済に結びつける相談活動の強化などを確認しました。
 2011年の石綿救済法の見直しに向け、とりくみを大きく前進させることが求められています。

4.労働安全衛生の活動家育成

 全国センターは6月4日〜5日、平和と労働会館などで第5回労働安全衛生中央学校を開催し、受講生、講師、運営委員ら99名が参加しました。うち受講生は80名でしたが、26県、12単産から受講生が派遣されました。
 福地保馬理事長の「働き方を変えてのいのちと健康を守る」の開講講義の後、第1講義「労働安全衛生法規と健康で安全な職場づくり」(古市泰久・全労働中央執行委員)、第2講義「ストレス・疲労・健康」(阿部眞雄・夏目坂診療所産業健康支援センター所長、第3講座「『心の病』など被災者・相談者への対応」(清水良子・京都職対連顧問)、第4講義「職場をどう把握し改善するか・健康調査の進め方」(垰田和史・滋賀医科大学准教授)が行われ、職場巡視実習コース(服部真・城北病院副院長)、ミニシンポジウム「労安活動と労働組合の役割」が行われました。
 閉校式では11単位(開校講義1単位、職場巡視実習コース4単位、その他の講座2単位)のうち、7単位以上受講した受講生64名に修了書が手渡されました。感想文は60数名の受講生から寄せられましたが、「第5回となって充実・発展した中央学校であることを実感した。来年は、労組幹部にも参加をすすめたい」など、いずれの講義も好評であり成功しました。
 また今期は「職場で活用できる労働安全衛生法の基礎知識」(古市泰久著、学習の友社)を発行しましたが、単産などから大口の注文が来て活用されています。さらに普及し、学習会などで活用することが求められています。
 1人でも2人でも開催し県内各地に「出前」も行う埼玉センターの労働安全衛生入門講座など、地方センターや単産などでも活動家育成のための「労働安全衛生講座」などが積極的に開催されました。
 第42回労災職業病一泊学校(働くもののいのちと健康を守る学習交流会)は11月7〜8日に京都本能寺会館にて近畿2府4県などから111人が参加し、職場の安全衛生活動、教職員の安全衛生と長時間労働の改善、福祉医療の仕事と健康など5つの分科会がもたれました。歴史と伝統があるこの1泊学校は、活動家育成に成果をあげています。

5.組織の拡大、強化

 (1)労働組合運動の中にいのちと健康を守る課題を位置づける課題
第3回単産労働安全衛生担当者会議を4月16日に開きました。これには8単産の担当者をはじめ16人が出席しました。会議では「この1年、雇用悪化が激変し職場力が落ち、心の病が増加しており、労働組合の役割はより一層明確になってきている」ことが交流され、化学一般労連の「『心の健康の保持・増進に関する統一要求書』のとりくみ」について学びました。そして各単産のとりくみの交流をし、労安活動を労働組合運動の中に定着させていくことを確認しました。
 「(1)職場で健康、安全を守る活動の推進」の項で述べましたが、この間単産のとりくみは活発になっており、この会議の回数を増やすなど労働組合運動の中に労安活動を位置づけるとりくみの強化が求められています。

 (2)「全都道府県に地方センターを」のとりくみとブロックセミナーのとりくみ
 関東甲信越の地方センターの仲間の援助を得て、2月24日、茨城センターが結成されました。これにより全国センターに加入する地方センターが活動する都道府県は23になりました。また各ブロックの県センターはで空白県にセンターをつくる援助を行いました。
 「県労連にも数多くのメンタルの相談が寄せられている。どの地域でも課題。県センターの必要性はその面からでもある」「健康に関する相談が多く、県センターがあるところとそうでないところでは、対応に相当な差がある」などの意見が出されており、職場や地域に密着した地方・地域センターの役割はますます高まっています。しかし多くの県では「事務局を担える人がいない」などの理由で、結成への一歩を踏み出せないでいます。
 ブロックセミナーは県センターがない県からも多く人が参加し、全県に地方センターを作ることを展望して行われました。2月に第8回働くもののいのちと健康を守る関東甲信越学習交流集会が熱海市で開かれ、160人が参加し職場でのハラスメント対策などを学び交流しました。6月には北海道セミナーが札幌市で行われ、100人が参加して「ディーセントワーク」について学び「職場の労働安全衛生」などで交流しました。7月には働くもののいのち健康を守る第1回中国・四国ブロックセミナーが高知市で行われました。134人が参加しパワハラ・セクハラ・メンタルヘルス、アスベストなどの分科会で交流しました。同じく7月に働くもののいのちと健康を守る第5回東北セミナーが福島市で開かれ、153人が参加し、メンタルヘルス対策、ホームレスの支援活動などを学び交流しました。11月には第20回人間らしく働くために労災職業病九州セミナーが熊本市で開かれ、735人の参加者でしたが、日韓シンポジウム「職場のストレスと過労死・過労自死」などが行われ、学習し交流を深めました。同じく11月に第9回働くもののいのちと健康を守る関東甲信越学習交流集会が埼玉・秩父市で開かれ158人が参加し、労安活動、教職員、医療従事者など6つの分科会が持たれました。
 全国センターは全労連や全日本民医連に協力を要請し各種の会議で討議いただくとともに「地方センターづくり促進プロジェクト」を設けました。プロジェクトでは、@特に力を入れ対策を強化するブロックとして東北、東海・北陸、中国・四国を確認し、A 県労連、民医連などの上記の地方ブロック会議に四役が出かけ地方センターづくり促進を訴える、B有力な単産に協力をお願いする。B地方センターづくり促進の文書(アピール)を出す、などの手だてを決めるとともに地方センター交流集会の開催を準備してきました。

 (3)季刊誌「働くもののいのちと健康」、月刊「全国センター通信」
 季刊誌「働くもののいのちと健康」、「全国センター通信」については編集委員会を定期に開催し、情勢や全国のとりくみを紹介するとともに職場での労働安全衛生活動に役立つことを心がけ編集してきました。しかし第11回総会活動方針にかかげた両誌紙の飛躍的拡大は今後の課題に残されました。

 (4)理事会、部会、検討会などの活動と事務局体制
 第11回総会で確認された弁護士や医師、研究者など専門家を理事会に補強することについては、精神科医の松浦医師の補充が実現しました。事務局体制の強化については今後の課題として残されました。
 なお全国センター理事会はアスベスト対策本部、地方センターづくり促進プロジェクト、公務部会、地域共同部会、労働基準行政検討会、メンタルヘルス対策委員会、労働安全衛生中央学校運営委員会、青年調査プロジェクト、健診問題ワーキンググループ、基金運営委員会(いの健賞の選定など)、広報委員会(「通信」の編集)、季刊誌「働くものの健康」編集委員会を設置し、理事以外の方々のご協力も得て、諸事業を進めてきました。10周年記念事業につては四役会議が推進役となりましたが、10周年歴史プロジェクトを設置しました。
 全国センターに求められている課題に見合った理事会機能の強化、検討会、部会、プロジェクトなどの体制づくり、事務局体制の強化が求められています。

 W. 今後1年間の方針

 「はじめに」で述べたように全国センター10周年記念シンポジウムでは、@「ディーセントワーク」とそれを保障する社会の実現、Aすべての働く人びとの健康問題を視野に入れる、B職場に地域に働くもののいのちと健康を守る主体の育成、が提起されました。この3点は私たちの10年の活動を総括し、今後の活動のあり方の基本を示すものです。
 ディーセントワークはILOが提唱したものですが、私たちは、生活ができる賃金が保障され、労働災害や職業病が起こらないよう配慮された安全な職場で生き甲斐を持って働くこと、人間らしい生活を保障する労働をディーセントワークと呼んできました。これを豊かにしそれを実現するとりくみが重要です。たとえば労働基本権など憲法が活かされた職場で働くこと、「平和なくして労働なし」の立場で戦争に反対する内容を盛り込むことなどです。これらは働くもののいのちと健康を守る課題と不可分です。多くの人びととの共同があってこそ達成できるものです。ディーセントワークをめざし、私たちも積極的に活動し発言していくことが求められています。
 第2に、今日の情勢のもとではすべての働く人びとの健康問題を視野におくことは言うまでもありません。青年が多くを占める非正規労働者のみならず、自営業者、農魚民などのいのちと健康もきわめて深刻です。職域のみならず、地域での課題をあわせて考えることも重要になっています。
 第3に、上記の2つの課題を進めるために、私たちの主体的な力をさらに大きくしなければなりません。現在23にとどまっている地方センターを、全県に確立すること、労働組合運動でのこの課題の重視、職域・地域でさらに多くの活動家を作っていくことなどが求められています。
 さらに今総会では全国センターとしてはじめて政策・制度要求(案)が提案されました。しっかり討議し私たちの要求を広く社会にアピールし、政府に対するたたかいを大きく前進させ、この実現に向け力をあわせることが求められています。

1.職場、地域で働く人びとのいのち、健康を守る共同の輪を

 今日の情勢は職域を含めた地域に目を向けたとりくみが重要になっています。雇い止めされた失業者や、決まった職場を持たない下請けや派遣の労働者など、無権利な労働者が多数生み出されています。一つの職場でも正規と非正規の労働者が同時に存在する構造となるなど、職場が流動化する労働者によって担われていますが、そのような情勢に対応して私たちのとりくみも進める必要があります。また働くものの多くが中小零細企業で働いています、そのことも地域にも目を向けなければならない理由です。

 (1)職域を含めた地域を視野に入れた活動を
 職域を含めた地域を見つめ直し、とりくみを強化するためには、地域の多くの相談機関や行政、医療機関、弁護士など専門家との連携、さらには事業主や経営者団体との連携も重要です。とりわけ地方センターは、これまでの実績を活かし職域を含めた地域を視野に入れた活動を強化する必要があります。
 @ 非正規労働者や青年、外国人労働者
 情勢や総括で明らかにしてきたように、非正規労働者や青年、外国人労働者の健康問題は重要な課題です。相談活動は後でも述べるように重要なとりくみですが、そこを糸口に職域、地域で正規労働者だけでなく非正規労働者や青年、外国人労働者の労働安全衛生を向上させていきましょう。
 A 中小零細業者や地域住民
 また労働安全衛生対策が不十分な50人未満の中小零細企業の働く人びとにも目を向ける必要があります。全国センターは「政策・制度要求案」でこの課題での要求課題を明らかにしますが、とりくみを前進させる方針や具体的実践も重要です。民商や土建組合での健診活動などの保健予防活動を基礎に前進させる必要があります。とりわけ経営者や業者団体、行政とも手を結ぶなど、地域全体を視野においた健康づくりにも積極的に参加していく必要があります。職域を含む地域を丸ごと対象とした健康づくりのとりくみに積極的に参加していきましょう。
 特定健診・特定保健指導が実施され、多くの問題点が明らかになってきました。「健康自己責任論」の立場に立ち、メタボリックシンドームさらにその中のハイリスク・グループのみを対象とするこの制度では、国民の健康は守れません。地域、職域の健康を守る実践の中から、自治体での住民の健康を守る施策の拡充も含め、制度的提案を検討していく必要があります。とりわけ職域では労働安全衛生法にもとづく健診や事後指導がこの制度によって後退させられないようにする必要があります。
 B 相談活動について
 労働組合や民主団体とともに「派遣村」などに参加し、積極的な相談活動を行いましょう。
 地方センターや労働組合に寄せられるこの間の相談の多くは、情勢を反映して雇用や生活の確保と密接に関連した健康問題が多くなっています。精神疾患労災認定請求や職場復帰、自殺の防止などがその代表でしょう。そして相談を寄せるのは、多くが非正規や失業者、外国人労働者で労働組合に組織されていない労働者であり、かならずしも「職場」にいるわけではありません。そして労災や社会保障に関する知識が不十分な労働者や青年が多くを占めます。様々な相談機関や行政などと連携しながら、総合的な対応を検討する必要があります。宮城のように県労連と県センターが事例検討を行うなど、総合的に対応できるシステムづくりを進めましょう。
 ますます増え対応も困難になっている相談活動について、全国センターとして検討していきます。

 (2)職場で健康、安全を守る活動の推進を
 労働安全衛衛生活動を、労働組合の最重点課題の一つとしましょう。健康であることは働き続けることの基本的条件です。メンタルヘルスは、働きやすい職場でこそ保持・増進させることができます。
 各単産は担当部門を持ち、交流集会やニュースを発行し単組や職場でのとりくみが系統的に発展するようにしましょう。また地方センターも同様のとりくみが求められています。
 @ ハラスメント、メンタルヘルス
 この間、メンタルヘルス対策は最重要課題です。この間単産などではこの課題が重視されてきましたが、全国的に見て単組や職場レベルでは、まだ十分な成果をあげていません。行政や事業主に対する要求を整理して要求していくこと、パワハラなどハラスメントのない職場づくり、職場復帰のルール作り、安全配慮義務を明らかにさせる上では労災申請が重要ですが数が少ないなど、など課題は山積しています。各単産、中央団体や各地方センターでは、引き続き重要課題としてとりくみを強めましょう。
 全国センターは、10月初旬に職場でのメンタルヘルス対策をテーマに第4回健康で安全に働くための交流集会を開催します。
 A 過重労働からいのちと健康を守る
 過労死や過労自殺の大きな要因となっている、長時間労働や夜勤など過重労働に対するとりくみも重要です。
 全国センターでは全労連などの労働組合とともに、24時間社会を改める夜勤規制の要求整理や運動について検討します。各地方センターなどでも「夜勤シンポ」を行うなど、とりくみを強めましょう。
 B 化学物質
 シックハウス障害、有機溶剤中毒など、有害性についての教育がないまま危険な化学物質を扱っている労働者、特に非正規労働者が多く存在し、職業がんなど化学物質に係わる職業病が見られます。全国センターはワーキング・グループを設置し方針を検討します。
 C 労働安全衛生活動の活性化
 以上のことを実践する上で労働安全衛生委員会の設置と活性化は不可欠です。労働安全衛生法など法規を学びながら、職場点検や健康調査を行い、安全衛生委員会を定期開催するなどの労働安全衛生活動を強化しましょう。また非正規を含めた労働安全衛生活動とすることは重要です。
 メンタルヘルスは労働安全衛生委員会の調査審議事項となっていますが、安全衛生委員会の場できちんととりあげ議論し対策をとることが重要です。また健診結果を労働安全衛生委員会で討議し職場全体の健康づくりを進めるなどのとりくみが重要となっています。
 全国センターは、単産労安担当者会議を最低年2回開催するなど会議を定着させていき、この分野でのとりくみを強化する方針を検討します。

 (3)被災者救済のとりくみ
 係争事案調査結果が示すように、労働災害の被災者救済は私たちのとりくみの大きな柱です。全国センターはこのとりくみが進むよう、労働基準行政検討会等で検討し事例検討会などを開催していきます。3月には第4回公務災害認定闘争交流集会を開催します。
 さらに全国センターは精神障害判断指針や脳心臓疾患認定基準などの改善のたたかいを強めます。

 (4)労災不服審査改悪反対のとりくみ
 廃案となった行政不服審査法「改正」案による労災不服審査制度改悪については、再提出をさせない立場から、政府交渉を持つなど反対運動を強めます。

 (5)アスベスト対策を強めよう
 アスベストによる健康被害は、今後ますます拡大していくことが予想されます。全国センターは、以下のとりくみを強めることを呼びかけ、秋にアスベスト交流集会を行います。
 @ アスベスト被災者を見つけ出し救済に結びつけるとりくみ
 製造業OB、建設業などの職域や地域で被災者を見つけ出し労災等による救済や健康管理に結びつけることは、ますます重要です。同一産業労働者の横の連携を強め、相互に支援していく体制を確立し強化していきましょう。地域での相談会や電話相談など積極的に行うことを改めて重視します。
全国センターでは2010年1月をアスベスト健康被害全国いっせい相談活動月間と位置づけ、各地方センターやアスベスト問題にとりくんでいる組織の積極的な参加を呼びかけます。
 最終事業所から遠方に居住している被災者の救済には、全国センターのネットワークを有効に活用していきましょう。
 医療機関においては中皮腫、肺がん、間質性肺炎・肺線維症患者の職歴を調査し、レントゲン・CT等の画像の見直しを積極的に進め、アスベスト被災者の完全救済に積極的に協力していきましょう。
 A 健康管理の強化
 労働安全衛生法にもとづく石綿健康管理手帳の取得運動を強めましょう。同時に「労災特別加入」していた一人親方に対する健康管理手帳を直ちに交付することなど制度の改善や指定医療機関を大幅に増やすなどのとりくみを強めましょう。環境省が行っている健康リスク調査については、疫学的検討が可能な健診を実施するように求めていきます。
 また全国センターが作成したアスベスト健康管理手帳の普及をはかるとともに、厚労省に国の制度の石綿健康管理手帳の改善を求めていきます。
 B アスベストの飛散防止など予防対策
 アスベストの飛散防止など予防対策についてはアスベスト対策基本法を制定し、省庁間の垣根を取り払い進める必要があります。同時に自治体や地域においては、周辺住民へ健康被害が発生しない対策の確立と「環境オンブズパーソン(仮称)」制度の検討を行う必要があります。さらにアスベスト除去作業の届出の徹底と監督を強化するためには労働基準監督官の大幅増員が必要です。
 また建物の検査や解体などのアスベスト除去対策に、国や自治体から補助金を出すことを全国的に制度化させていきましょう。
 C 国と石綿関連大企業の責任を問う裁判闘争への支援を
 大阪の泉南国賠訴訟、首都圏建設アスベスト訴訟、尼崎でのクボタを相手取った訴訟などと国と石綿関連大企業の責任をとう裁判に勝利することは、国にきちんとしたアスベスト対策を行わせる上でもきわめて重要です。全国からの支援を強めましょう。同時に造船などでは企業補償を求めるたたかいも強化しましょう。
 D 補償・救済制度の見直し、石綿基本法の制定を
 2011年は石綿救済法が見直される年ですが、石綿救済法の給付水準、給付内容を労災並みに引き上げること、きびしすぎる認定基準を改めることなどを要求していきます。労災補償についても認定基準とその運用など制度の改善を求めるたたかいを強めましょう。
 同時に石綿の健康被害の実態を明らかにする疫学調査の実施や、国と石綿関連大企業の責任による予防から補償まで総合的な対策を可能にする石綿基本法、石綿基金の確立を求めて行きます。

2.活動家づくりを進め、「いの健」運動を大きく発展させる

 今日の情勢は多くの活動家づくり、全都道府県での地方センターづくりなどいの健組織の発展強化が切実に求めれています。

 (1)全都道府県にいの健センターを
 2011年までに全都道府県に地方センターを確立することは、最重点課題です。全国センターは東北、関東甲信越、東海・北陸、近畿、中国・四国、九州の各県センターの集まりをブロックとし、@空白県をなくすこと、Aブロックセミナー開催、B地方センターの交流などを課題にとりくみを進めます。当面、東北、中国・四国など空白県が多く議論も進んでいるブロックを重視します。ブロックセミナーの開催とあわせ各ブロックで空白克服を進めましょう。全国センターでは全労連、全日本民医連、有力単産とともに、とりくみを強めます。
 地方センターは専従者や事務所など形と整えてから出発するのではなく、まず作ることが重要です。地域や職場に密着し、学習会や相談活動などできることから出発しましょう。
 現在ある地方センターの体制強化も重要な課題です。ベテランの奮闘とともに若い力を育てていくことを重視し、財政基盤も確立していきましょう。
 2月に宮城で地方センター交流集会を開催しますが、県労連、県民医連なども参加を呼びかけ成功させます。

 (2)労働安全衛生の活動家育成
 青年に社会保障や労基法や労災補償、労働安全衛生に関する知識が十分でないことが指摘されています。「職場で活用できる労働安全衛生法の基礎知識」などのテキストを活用し各単産、地方センターで無数の学習会、講座などを組織していきましょう。また労組として必要な活動家を意識的に、計画的に育成していくことが重要です。
 全国センターは6月に第6回労働安全衛生中央学校を開催します。

 (3)全国センターの発行物の拡大と組織の強化
 季刊「働くもののいのちと健康」や「全国センター通信」の充実と拡大をはかります。
 理事会機能と事務局体制の強化をはかります。
 ここ数年、研究会活動は不十分でした。研究テーマを明確にして研究活動を進めるなど、研究会の組織的なあり様について検討しとりくみを進めます。

 (4)国際交流と連帯
 ここ数年、労働安全衛生に関する国際的な交流や連帯していくとりくみは不十分でした。このとりくみを強化するため、検討を進めます。

3.全国センター政策・制度要求の実現

 全国センターの政策・制度要求の実現に向け行動を起こしましょう。全国センターは政府に要求を申し入れ、実現のための運動を組織していきます。


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