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深刻な健康悪化、いの健運動の強化を! 働くもののいのちと健康を守る全国センター第7回総会

 働くもののいのちと健康を守る全国センター第7回総会が、12月11日に全労連会館で開かれました。「東西セミナー」や「過労死・過労自殺研究集会」の成功、東京センターと広島センターの結成、労災保険民営化反対の運動、労働保険審査会交渉、05年ILO総会に向けてとりくみ、労災相談・労(公)災認定闘争など、大いに盛り上がった1年を総括し、05年度方針、予算、規約改正案などすべての議案を全会一致で採択しました。なお、韓国の源進職業病財団・朴賢緒理事長と全国じん肺弁護団連絡会の鈴木剛事務局長が来賓のあいさつ。画期的な最高裁判決を勝ち取った筑豊じん肺原告団・弁護団に対して「第1回いの健賞」の顕彰式が行われました。

5つの議案が満場一致で採択

 開会冒頭、福地理事長が理事会を代表してあいさつ。朝日新聞1面トップの「公立学校教員の精神疾患での求職者が3,194人過去最大」との報道を紹介。健康診断の有所見率が13年前の2倍の47.3%という深刻な労働者の健康状態悪化を指摘しました。さらに、筑豊じん肺につづく北海道石炭じん肺の国との和解協議の現況とたたかいの強化、いの健運動の強化を呼びかけました。また、この1年間に「過労死・過労死研究会」の成功など全国センターの運動が新たな発展したことを強調しました。そして、積極的な討論で総括を充実させ、いっそう前進させる来年度方針の確立を訴えました。

 池田事務局長が「活動方針案」を提案しました。なお、05年度の重点課題は、@「職場の安全衛生交流集会」の開催、A労(公)災認定闘争・被災者救済運動の強化、B「労働安全衛生中央学校」の開催、C労働法制改悪阻止のたたかい、D05年ILO総会対策です。今中事務局長代行が「決算・予算案」と「基金運営規定改正案」、木下常任理事が「規約改正案」を提案。13人から方針案を豊かにする発言(4〜5面に掲載)があり、5つの議案が満場一致で採択されました。

 全国センター基金の「顕彰制度」にもとづく第1回いの健賞が、筑豊じん肺弁護団・原告団に贈られました。総会の顕彰式には、遺族原告の鹿毛さんと大塚さん、馬奈木弁護団長が参加されました。

 なお、理事会から新役員の推薦名簿が紹介され、満場の拍手で承認されました。福地理事長が再任され、池田事務局長が退任され今中事務局長が新任されました。

第1回いの健賞―筑豊じん肺訴訟原告団・弁護団

 「筑豊じん肺訴訟のたたかいは、わが国の労災職業病闘争の前進に格段の寄与をした。……貴原告団・弁護団の業績をたたえて顕彰する」−顕彰状の一文です。顕彰のお礼の言葉で馬奈木弁護士は、「提訴から19年、解決を見ずに8割以上の原告が死亡した残酷な裁判だった。最古で最大のじん肺被害の国の責任が、はじめて最高裁で認められ、国の粉じん防止義務をはたす立法措置と政省令で守らせる行政責任が明確になった。北海道石炭じん肺で国は『除斥期間』を口実に事実上和解を拒否した。無法者日鉄鉱業と国の責任を追及し、じん肺根絶のたたかいに全力をあげる」と力強い決意表明がありました。

来賓のごあいさつ

◇全国じん肺弁護団連絡会 鈴木 剛 事務局長

 じん肺救済・根絶の4半世紀のたたかいで90件以上の勝利判決と和解で加害企業の責任をとらせてきた。企業との間の解決は、「あやまれ、つぐなえ、なくせ」の基本要求にもとづき謝罪や補償、根絶の立場を堅持したものとなっている。今年4月に筑豊じん肺訴訟ではじめて国のじん肺防止責任を断罪する最高裁判決が出され、北海道石炭じん肺でも国の責任を明確にした札幌高裁の職権和解がすすんでいる。しかし、昨日(12月10日)、国は「除斥期間を認めない和解では応じられない」との回答をしめし、和解は決裂して15日の判決を迎えることになる。15回を重ねた「じん肺キャラバン」の行動をはじめ、じん肺のたたかいは国の安全配慮義務や発注者責任を問う段階にある。全国センターとの連帯を強め、じん肺根絶に向けて全力でたたかいたい。

◇韓国・源進職業病管理財団 朴 賢緒 理事長

 昨年の総会に続いて参加した。九州セミナーもふくめ、全国センターが労働者の健康破壊を乗り越え、予防のたたかいに全力をあげていることを知っています。韓国では、97年の通貨危機を背景にリストラが進行し、失業者や非正規職が激増し、生活と健康は深刻な状態にある。しかし、政府は公務員労働組合の結成を妨害し、国会ではハンナラ党の抵抗で国家保安法廃止案が頓挫する可能性すら生まれている。李承晩以来の独裁政権を支えた反共主義が、今なお民主主義と人権を抑圧している。新自由主義とアメリカの一国覇権主義が、アジアの平和と安定を脅かしている。北朝鮮問題やイラク派兵を口実に改憲論まで浮上し、日本が戦争をしかける国になろうとしている。戦争と働く人びとの命と健康は両立しない。平和憲法を守ってほしい。不戦平和の韓日民衆連帯万歳。

第7回総会メッセージ

◇財団法人労働科学研究所 前原直樹 所長

 第7回総会おめでとうございます。じん肺訴訟、過労死労災認定や労働安全衛生、健康を守る運動で貴センターが果たしている役割が、ここ一年格段と高まっています。
 私ども労働科学研究所は、「安全で健康な、働きやすい仕事と職場づくり」に向けた調査研究活動を行っております。巨大プラント、医療現場、自動車運転に係る安全確保・事故防止の研究、休息や睡眠の改善効果の研究、メンタルヘルス対策の研究などすすめてきました。
 今年度は、慢性疲労研究を一歩進め、過労・過ストレス状態の研究をすすめ長時間・過密労働による健康と安全の問題解明する調査活動を行っています。貴センターの益々を祈念して、ごあいさつとします。

労災認定成果を職場の安全・健康対策に生かそう

◇教師労働の過重性認め認定判決 大阪センター・下岡正忠

 1月30日に大阪高裁は、「堺市教員・鈴木過労死は公務災害」とする逆転勝利判決を下しました。原告が主張した休憩時間や持ち帰り残業、要配慮児童への指導など教師労働の身体的・精神的な過重負荷を全面的に認めたもので、完全勝利の判決です。事実の積み上げや世論を広げる行動、専門家との連携、遺族を支える体制などが、勝利した教訓です。教職員の健康破壊が広がる中で、労基法・労安法を守り過労死しない学校職場づくりをめざします。

◇人間の尊厳守った遺族の勇気 九州セミナー実行委・青木珠代

 TOTO・釘宮過労死の民事損害賠償裁判が、今年4月に勝利和解しました。釘宮さんは、100時間以上の残業や上司のいじめが原因で98年5月に45歳で亡くなり、2002年に労災認定されました。その後もTOTOで過労死が続き、職場改善をめざして遺族が会社に損害賠償を求める裁判を起こしました。支援する会は、はじめての民事裁判を自分たちの職場や地域の問題としてとらえ、歌をつくりCDを販売して運動を広げました。和解文書には、従業員のいのちと健康を守る会社の責務が明記されました。遺族の勇気が人間の尊厳を守ったと感じています。

◇生命保険金は遺族に支払え 愛知センター・近森泰彦

 現在、住友軽金属の団体生命保険裁判は最高裁で係争中です。団体生命保険とは掛け捨て保険で会社が全従業員に掛け、支払額との調整で掛け金が戻ってくる国の制度です。以前は、保険金が遺族に支払われていました。現在は、半分ぐらいの契約会社で会社が受け取っています。契約約款では被保険者の同意が必要だが、ほとんど無視されています。最高裁で勝利判決を確定させ、法律で遺族への支払いを明記させる決意です。

◇遺族の人格を否定する労基署の対応 東京過労死家族の会・三浦久美子

 私の夫は労災病院に勤務していましたが、職場のストレスで過労自殺しました。労災申請して労基署で遺族がうけた扱いを述べます。担当官から、うつ病の発症と仕事に関係や私生活についてたずねられます。「夫婦関係は週何回」など、プライバシー侵害や人格否定の質問があいつぎます。私は、ノーコメントで対応しました。11月22日の家族会による厚労省交渉で、プライバシー侵害への対処を求めましたが、「改善指示を通達した」と答えています。皆での監視が必要です。うつ病の闘病生活が8か月でしたが、家族は巻き込まれ精神を病みます。職場では厄介者で、だれも支える仲間がいません。ぜひ、みなさんで支えてください。

◇安全守れば死なずにすんだ 京都センター・清水良子

 3月にJT(日本たばこ)で深夜勤務中の女性が労災事故で死亡された。安全対策はまったくなされていないことが、現場の証言で明らかにされています。荻野過労死裁判も9月に高裁で逆転勝訴です。いずれも現場で安全や健康が配慮されていれば、死なずにすんだ事件です。長距離トラック運転中の脳梗塞が12月1日に労災認定されました。1か月の労働時間が400時間を超え、「自動車運転手の労働時間改善告示」がまったく守られていません。企業責任を問う民事裁判もすすめているが、過労死・過労自殺を根絶するたたかいが求められています。

◇東京は全国運動の一翼担う 東京センター・柴田啓和

 4月17日に東京センターを結成しました。全国センター前事務局次長の色部さんを専従に迎え、2人のボランティア事務局とで東京センターを支えています。つい先日、設備管理の28歳の青年から「1年前からうつ病で治療していた。上司から『心の持ち方だ』と叱責され、配転や業務の拡大で疲れきって職場で倒れた。有給休暇で休んでいるが会社の戻りたくない」という相談がありました。センターへの期待が広がっています。東京民医連と東京地評が中核になり、地域センターづくりや職場の安全予防対策に全力をあげ、全国運動の一翼を担う決意です。

◇労災職業病全国交流集会の開催を 千葉センター・門間金初

 千葉センターは毎月1つの企画を必ずとりくみ、機関紙も発行しています。昨年も発言しましたが、全国センターは労災職業病全国実行委員会の伝統を継承しています。被災者や遺族、活動家が労災職業病の運動を交流する集会を開催してください。

◇近畿で500人規模の学校めざす 大阪職対連・梶山代子

 11月13〜14日に「第37回労災職業病一泊学校」が、「壊された職場の働き方の見直し」を基調テーマに開催されました。大阪や兵庫、京都、滋賀、和歌山、奈良、三重の近畿を中心に福井・福岡から延べ211人が参加しました。「近畿を網羅する一泊学校」の足掛かりができ今後は、労働組合を主体に幅広い専門家との協力・協同、法律・医療・商工関係団体の参加で500人規模の集会をめざす展望ができました。情勢がこの様な活動を求めていると思います。

◇検診で陽性わかり命拾いした 全商連・尾田徳崇

 全商連共済会の20周年事業で「大腸がん検診運動」をすすめています。11月末で申し込みが5万3千余人、受診者数2万500余人で内947人が陽性でした。仕事が忙しく経営が苦しい中で、会員の健康診断受診率は2割程度です。大腸がん検診は、早期発見と自分の健康や仲間の健康を考える機会になります。「検査結果が陽性で命拾いをした」との感謝の言葉もたくさん寄せられています。業者の健康を守る運動を強めます。

◇学校から精神疾患・過労死なくす 全教・杉浦洋一

 1月と9月に大阪高裁で教員の過労死を公務災害認定する判決が出されました。鈴木判決と荻野判決は、要配慮児童の指導や帰宅後のプリント作成など教員の身体的・精神的な過重労働を正確に認定した画期的な判決です。教員の実態調査では残業が平均80時間10分ですが、教育委員会は残業を認めません。この秋、当局に残業実態調査を迫り新しく5つの県で実施させました。11道県では労使協議もはじまっています。京都の超勤裁判や埼玉の超勤手当措置要求など全国に広げ、学校現場から精神疾患や過労死をなくしていきます。

◇全国センターの国際的役割に期待 建交労・藤好重泰

 5月にトンネルじん肺は、230億円でゼネコンと完全和解しました。現在、国の責任と根絶を求めて国家賠償の裁判をすすめています。今日は、国際的な労働安全衛生の動向を述べます。05年ILO総会の第4号議題で「労働安全衛生推進の枠組み」が提起され、全国センターはILOと日本政府への意見書を準備しています。日本の労安制度の最大の問題点は、元請責任と労働者参加権が保障されていないことです。同じラインに派遣や下請け、個人請負が働いているなかで、労安委員会の構成や安全衛生の元請責任、労働者の参加権が問われています。アジア、とりわけ中国で急増しているアスベストの輸出国が日本です。労働安全衛生のナショナルセンター全国センターが、国際的な役割を果たすことを期待します。

◇労働保険審査会の民主化を 東京センター・廣田政司

 2月に日航を退職して東京センターのボランティア専従をやっています。労働保険審査会の公開審理に参加する機会が増えています。審査委員が、「書いていることは言わなくてもいい。パソコンが使えないのはおかしい」など、自分の意見をおしつける審理妨害がめだちます。某労働者側参与から、「公開審理は形だけで、その前に結論が出ている」という話も聞きました。公開審理の日程を東京センターに集中してください。労働保険審査会の民主化に全力をあげます。