結成5周年を跳躍台に力合わせようらなる飛躍に向けて 100人超える参加で第6回総会開く

 結成5周年を迎えた全国センター第6回総会が、12月6日午後に全労連会館で開かれました。小泉首相の諮問機関である総合規制改革会議が、労災保険の民営化を進めようとする中、全国から100人を超える参加で熱い討論を交わし、たたかう決意を確認した総会でした(3、4、5面に関連記事)。

いのちと健康を守る協力・共同を

 主催者あいさつに立った長谷川理事長代行は、「全国センターの設立目的は、働くもののいのちと健康を守る事業を通じて人間が尊重され、安心して働ける職場と社会づくりに寄与すること。結成5周年を跳躍台にして、その実現に向けてすべての構成員が力をあわせよう」と呼びかけました。
 忙しい中、全国じん肺弁護団連絡会の土田弁護士、過労死弁護団全国連絡会の玉木弁護士、労働科学研究所の猪俣維持会次長、韓国源進職業病管理財団・朴理事長から、協力・共同の重要性を呼びかける来賓のあいさつを受けました(3面掲載)。

 

労災保険民営化の暴挙許さない

 池田事務局長から03年度運動方針、色部事務局長から会計決算報告および予算案、監査報告が提案され、17人から発言がありました。労災職業病の相談や認定闘争、職場での労働安全衛生対策の経験、あらゆる産業で長時間・過重労働が蔓延し健康破壊がすすんでいる実態報告、労災保険民営化の暴挙を許さないたたかいの経験、情勢にふさわしい全国センター機能の充実求める発言などが、あいつぎました。
 池田事務局長の討論のまとめを受け、すべての議案と「労災保険民営化に反対する−特別決議」が満場一致で採択され、新役員が選出されました。

 

−来賓あいさつ−

●全国じん肺弁護団連絡会・土田弁護士
 30年近いじん肺闘争は、裁判を通じて加害企業の責任を追及し、50件の勝訴と80件の和解を実現してきた。筑豊じん肺で福岡高裁が国の責任を認める判決を出し、トンネルじん肺も根絶にむけて国の責任を追及する裁判に立ち上がった。秋の第14回じん肺キャラバンの成功を土台に、すべての労災・職業病の根絶に向け全力をあげる。

●全国過労死弁護団連絡会・玉木弁護士
 昨年の過労死が年間317件、過労自殺が41件認定され、前年の倍以上になった。被災者や遺族、支援の努力の結果だ。しかし、500件もの不支給決定もあり、過労死・過労自殺の深刻な実態は改善されていない。新しい認定基準には、「労働時間だけで労働の質を判断しない認定のありかた」「異常な出来事の強度判断が恣意的であり、精神疾患発症後の出来事を判断しないこと」などの問題があり、改善運動を重視する。

●労働科学研究所・猪俣維持会次長
 4月に全国センターと定期協議をおこない、協同の新しい段階をむかえている。電力や鉄鋼の災害、医療事故が多発し、組織事故の問題点の解明が求められている。安全は、長時間過密労働やメンタルへルス不全と密接に関わっており、働き方が根本にある。働きがいや働きやすい職場づくりをめざす、全国センターと労研の協力・協同を強化したい。

●韓国源進職業病管理財団・朴理事長
 9月20日、400病床の総合病院の開所式をおこない、全国センターからも参加していただいた。働くものの健康破壊は、日本より韓国は厳しい。失業率が20%近く、健康や衛生が後回しになっている。金属労組の調査では、50%以上が有所見者で頚腕、腰痛、振動障害など作業関連疾患だ。社会保障が不十分で労災認定の経験も不足している。日本の経験に学んでいきたい。革新政党が後退し、保守反動の動きが強まっている。日本が世界にほこる憲法を守り、アジアの非核・平和体制づくりの共同を強めよう。

−総会発言要旨−

暴挙許さ労災・職業病の予防認定職場復帰 センターの役割と期待大きい

◇新会員の3分の1が過労自殺 全国過労死を考える家族の会・大森光子

 ご支援ありがとうございます。11月21日に家族会総会を開いた。この1年間で家族会のメンバー20人が労災認定や和解を実現した。一方、新会員が17人うち3分1が過労自殺で過労死以上に深刻だ。企業に予防通達を守らせることや認定の迅速化など、厚労省の姿勢が問われる。

◇建設現場でアスベスト肺ふえる 東京土建・高木史雄

 建設現場でじん肺・アスベスト肺が増加している。左官や溶接工でじん肺が新規認定された。建設現場では、不燃材や断熱材にアスベストが広く使用されてきた結果、肺ガンや中皮腫が増加している。現場が常に変わるため最終事業所の特定が困難なことや1人親方のため労災認定が難しい。国家賠償の裁判を考えている。全国的な被害実態の告発や医師・医療機関の充実が求められている。

◇だれでも参加できる交流集会 千葉県センター・門間金初

 運動の教訓や交流が決定的に重要だ。秋の交流集会が専門的になっており、だれでも参加できる企画内容を検討してほしい。全国センターは職業病全国交流集会を継承した点も考慮してほしい。

◇04春闘で労災保険の民営化反対 北海道職対連・伊藤英敏

 来年2月に「北海道セミナー」を開く。主なテーマは、職場の労安活動、職場のメンタルへルス、長時間過密労働、地域の保健活動・組織づくりなど。心の病をめぐり職場では、たいへんな事態が広がっている。04春闘では、サービス残業をなくすことと労災保険の民営化反対を重点課題にする。

◇学校現場を告発する意見書運動 大阪職対連・下岡正忠

 堺市で教員をしていた鈴木均さんが過労死して13年が経った。9月に結審になり1月末に判決が予定されている。昼食もトイレも休憩もまともにとれない学校現場の実態を告発する意見書運動をすすめ500を超える証言を集約した。基金の姿勢を変えることが決定的に重要だ。労安推進委員会の設置の方向など市教委も変化している。

◇労基署の担当官の姿勢かえる交渉 京都センター・清水良子

 グレーゾーンのハイヤー運転手の過労死事件が労災認定された。労働時間を証明する資料がほとんど無い中で簡単な意見書で申請した。1回の勤務が20時間で月13勤務、無線での配車なども担当し、休憩も食事もとれない実態を同僚や元同僚の証言で補充し、労基署の担当官の姿勢を交渉で変えてきた。労基署が判断した残業時間は70時間程度だが、業務の過重性を判断した。自動車運転手の労働時間改善告示や過労死認定基準の改善が必要だ。労災保険民営化反対のたたかいにも全力をあげている。

◇タクシーの規制緩和で健康破壊 自交総連・菊地和彦

 2002年にタクシーの規制緩和が導入され、客が減少する中で1万台増車。年収が300万円以下に減少し、労働時間が年間3,300〜3,500時間にも増加している。健康診断の有所見者率が87.7%にも達し、運転中の過労死事故も急増している。規制緩和は、労働者の生活と労働、健康を破壊している。労災保険の民営化反対にも全力をあげる。

◇自殺者ださない励まし合い 全商連・西村卓

 全商連が2002年9.10月に実施した「営業とくらし・健康実態調査」では、経営難と健康破壊が密接に関わっていることが明らかになった。業者婦人の健康調査では、6割が身体の不調を訴えている。しかし、「保険証がない、暇がない」などの理由で受診できず、死亡する悲劇も起きている。10月の命と健康問題での「全国交流集会」では、健診運動、予防運動、「自殺者ださない、声の掛け合い、励まし合い」の重要性が強調された。

◇相談継続が30件以上 神奈川センター・稲木健志

 神奈川センターの相談継続案件は、30件以上ある。うつ病労災認定されたファンケル社が、「朝日新聞の報道が事実をゆがめている」として1億円の名誉毀損を訴えている。基金本部に不支給決定した岡野・頚肩腕障害事案の情報公開や面会を求めたが、係争事件と言うことで拒否している。基金民主化の要求や運動を重視してほしい。

◇専門医・医療機関の充実を 大阪職対連・川野陸夫

 かつて、頚腕認定闘争が大きく広がった時に、多くの専門医が生まれた。いま、頚腕や化学物質など作業関連疾患の医師や医療機関が不足している。患者・医師・医療機関・研究者の協議の場所やデータ収集の充実に努力してほしい。

◇基金民主化のたたかいを 宮城県センター・富樫昌良

 各県センターの活動報告書を資料としてまとめてほしい。心疾患を抱える運輸労働者が過労死した。企業訪問で「もっとひどい状態があるから我慢してくれ」ととんでもないことをいう。健康診断は形式だけになっている。基金は、中学校教員の過労死事案で、「中体連の業務はボランティアと判断し、不支給を決定した」としている。基金本部が判断しているが、国会闘争もふくめ基金民主化のたたかいを重視してほしい。東日本セミナーの成功に全力をあげる。

◇来年4月に東京センター結成 東京地評・中野謙二

 東京地評の労働相談室には、毎月60〜70件の労働相談が寄せられる。解雇や未払い賃金などが多いが、職場のいじめや退職強要で精神疾患を発症した相談など、いのちや健康問題も増えている。来年4月17日の東京センターの結成に向けて7月からに準備会を重ねている。首都東京にふさわしいセンターづくりに全力をあげる。

◇九州セミナーに600人参加 大分県健康センター・外西卓二

 九州セミナーを8年ぶりに大分で開催した。実行委員会では、セミナーを通じて県センターの参加団体を増やすこと、職場健康実態調査を成功させること、学者・医者・弁護士との共同を広げることを目標にした。大分のセンターは14団体で構成されているが、セミナー実行委員会に20団体が参加し、2日間で600人(県内300人)が参加し、大成功した。

◇相談事例のデータベース化を 愛知センター・鈴木利往

 季刊誌で紹介された内野過労死事案が、豊田労基署で不支給決定された。全国センターから紹介があった相談事案だが、残業時間の確定や医証に不十分があった。労基署交渉の回数も少なかったようだ。相談事例のデータベース化や全国の運動の事例紹介を重視してほしい。

◇学校現場では5分で給食、放課後トイレ 全教・大里総一郎

 学校現場は、「5分で給食、放課後トイレ」という深刻な実態で、在職死亡や長期休職者が増加している。職場の安全・健康を守る体制がまったく無い中で、組合で対策委員会を設け、労安委員会や衛生委員会づくりをすすめている。50人未満事業所の対策方針の確立が求められている。

◇団体生命保険の裁判勝利を 健康文化会労組・日向寺淳一

 昨年、名古屋高裁は、団体生命保険の2つの裁判で異なった判決を下した。近藤裁判では、「遺族に支払わなくとも公序良俗に違反しない」と判決した。在職死亡や過労死・過労自殺で保険金が遺族にほとんど支払われない実態が明らかになる。遺族補償を企業補償にすり替え、労働者の死亡で会社がふとることは許せない。最高裁の勝利判決をめざし全力をあげる。

◇深夜勤制度改悪許さぬ 郵産労・高野千弥子

 郵便局のおける深夜勤務制度導入の理由は、郵便の翌日配達のためである。10年前の制度改悪で2時間の仮眠時間が廃止され14時間連続勤務になり、10年間で100人の在職死亡がでた。来年2月に、「週4日間夜9時から朝8時までの連続勤務」が導入されようとしており、反対している。過重労働に対して医学的な見地から労働制限を検討してほしい。