さらなる飛躍に向けて −全国センター第5回総会開く−

 全国センターの第5回総会は2002年12月14日、午後1時より全労連会館ホールで開催されました。この総会には全国から代議員114名(委任含む)、傍聴者10名、役員・要員を含め160余名の参加の中、開催されました。全国センター結成(98年12月15日)以来、5年目を迎える節目の年にあたり、厳しい情勢にどのように立ち向かうのか、どのような方針を掲げて前進するのか、来賓の挨拶を含め熱い議論と討論が交わされた総会でした。

1.主催者挨拶「前進に確信を」
 花井副理事長の開会宣言の後、総会議長に大阪センターの神谷氏、生協労連の桑田氏を選出し議事に移りました。健康が優れず当日欠席した辻村理事長に代わって主催者挨拶にたった長谷川理事長代行は、結成から今日までの全国センターの歩みを振り返りつつ、多くの団体、個人、専門家・研究者のご支援を頂きながら前進を遂げてきたことに感謝の表明をすると共に、私たちの「前進」を確信にしていくことの大切さを訴えました。その中で、過半数を超える道府県で「地方センター」が形成され、さらに複数以上の都県が「センター」づくりを準備していること、そして過労死新認定基準をはじめ、サービス残業根絶、過重労働規制の通達等を厚生労働省から引き出し、認定、補償の前進と併せて、予防の取り組みへの前進の武器を勝ち取ったことの意義を強調しました。

2.感銘を呼んだ来賓挨拶
 続いて来賓の挨拶に入りましたが、4人の来賓の出席及び挨拶は、この間の全国センターの諸団体との協力共同の前進を反映しているものでした。来賓の挨拶は、おのおの短い時間帯にもかかわらず、いわば「ミニ講演」に匹敵する中身の濃い内容で参加者に深い感銘を与えるものでした。
(以下、要旨紹介)

 ILO−堀内光子駐日代表は、ディーセントワークを始めILOが目指している安全衛生、働き方の基本理念の実現を強く訴え、日本における実現と共に日本が担うべき、とりわけ発展途上国に対する国際的責務についても強調されました。そして今日強化すべき視点として@働く人達の安全衛生における使用者責任の一層の明確化、企業の社会的責任を果たさせること、A行政組織・国を含めた社会的対策の充実、B労働者(労組)・政府・企業のパートナーシップ、労働者(労組)の参画の促進、C児童労働、奴隷労働の廃絶、ジェンダー的施策の充実、などを課題として提起されました。

 労働科学研究所−前原直樹所長は、この間の労働科学研究所(以下、労研)と全国センターとのさまざまな分野での協力共同の前進を評価されつつ、労研の機関での討議を前提とした二点についての「申し入れ」を提起されました。その一点は、労研と全国センター両者の協力共同の関係を一層前進させること、そのために年2回の両者の定期協議を実現すること、二点目は労研を労働者・労働組合がより一層活用する労働科学のメッカとして「再建」していく上での協力の要請ということでした。さら労研の重点研究課題として@疲労と睡眠に関する研究、A職場の「ゆとり創造」に関する研究、B原発事故、医療事故など、ヒューマンエラーに関する研究―安全文化の枠で考える、を挙げられました。

 過労死弁護団玉木事務局長は、とりわけこの1年間の過労死認定、裁判における際だった前進について具体的数字や事例をはさみながら特徴づけました。2001年12月12日の過労死認定基準制定の背景とその特徴を解明し、また合わせてその不充分さ、克服すべき点についても言及されました。前進の要因として被災者家族、原告などを中心に、支援団体・個人が、そして医師、弁護士をはじめとして専門家が力と知恵を集め、この間の営々とした努力を重ねてきたこと、こうした運動の成果と到達を確信にながら、過労死予防のために一連の「通達」を職場で活用することの大切さを強調されました。

 じん肺弁護団鈴木事務局長は、石炭、トンネルじん肺の取り組みのこの間の大きな前進について強調されました。全国のじん肺闘争は、企業の謝罪、補償面での勝利を連戦連勝の勢いで進めてましたが、じん肺の予防、国の責任追及の面でまだ不充分であり、とりわけILO、WHOの提唱している2005年にじん肺を大きく減らし、2015年には根絶していくためのプログラム実現を国に迫っていく取り組みの大切さを強調されました。トンネルじん肺根絶原告団が11月に提訴した国の責任追及裁判への支援、数々の敗訴を重ねながら頑迷な日鉄鉱業に対する社会的包囲、映画「人として生きる」上映運動の成功など今後の重点として提起されました。 

3.情勢に対応した議案の提起
 その後、「2002年のまとめと2003年の重点課題と方針」−池田事務局長提案、「全国センター基金」運用規定について−福地副理事長提案、間に「会計監査報告」−麦島監事提案を挟めて「2002年の決算報告」「2003年予算案」−色部事務局次長が提案しました。提案内容はぜひ議案書を見ていただくとして特徴点を上げると「2003年度重点課題」では@働くもののいのちと健康を守る予防の立場から、長時間労働規制、サービス残業根絶の運動を社会的運動として盛り上げる、A研究者(機関)、専門家との共同協力を一層広げ研究会、各種プロジェクト等の事業を発展させる。そのためにも「センター基金」の運用をスタートさせる。Bすべての都道府県に地方センターの確立に向けて、広範な団体と協力を広げていくとなっています。なお、一年間討議に付してきた「21世紀初頭の目標と課題」(案)については、さらに討議を重ねることとしました。また提案の中で、定期発行堅持、経費節減のために月刊「通信」を12ページ建てから8ページ建てにすること、個人会員、賛助会員の会費を年間10,000円から半額の5,000円に引き下げることなども提起されました。
 「全国センター基金」については、@特別研究のプロジエクト推進、A若手研究者の研究活動助成、B研究・調査のための海外派遣の助成などに「運用」することを確認し、いよいよ本格的にスタートしました。
 「会計報告」では、2002年度決算では累積赤字解消に向けて確実な一歩を踏み出したこと、単年度では黒字に転じたこと、2003年度はさらに諸経費の削減を図りながら2004年度には黒字基調に転換していく見通しが提起されました。

4.11名が発言、予防活動の前進を反映
 提案を受けた後、代議員等からの発言に移りました。11名が議案をより豊富にする立場で発言しました。発言者と発言のタイトルを紹介します。(敬称略)@大阪/中山「港湾職場での腰痛予防の取り組み」A愛知/大家「『通信』等情報手段の充実改善」B千葉/木原「2つの過労死認定の教訓」C賛助会員/秋元「団体生命保険問題の取り組みの意義」D宮城/富樫「宮城センターの活動、教職員の過労死自殺問題」E愛知/宮崎「安全衛生フランスとの交流、学校での安全衛生活動F九州/池田「九州セミナー取り組みの教訓」G民医連/広瀬「産業医との連携、労働との関連での研究・調査問題G全商連/竹村「中小業者の生活・健康実態調査の中間報告」H安全プロジェクト/藤好「安全対策提言案について」I腰痛・頚腕プロジェクト/保坂「腰痛、頚腕の認定基準改定要求案について」でした。
 さらに支援の訴え、支援に対するお礼等のテーマで@過労死家族の会/大森Aさざんか学園健康裁判/加藤B山形庄内交通過労死事件/関C大田患者会/藤川が発言しました。討論の後、採決に移り議案はすべて満場一致で採択されました。

5.新役員を選出―決意新たに
 その後、2003年度役員提案を田村副理事長から報告しました。新しく副理事長に上畑鉄之丞氏(聖徳大学教授)、山根岩男氏(MIC)の就任を得て満場の拍手の中で確認されました。(役員名簿は別掲)なお、総会の時点で花井副理事長が退任、また年度途中で出身団体の任務の関係で交替された役員への感謝を含めて拍手が送られました。
 その後、岡村副理事長が意気高く閉会の挨拶を行い、新しい年度の決意を固めあいました。総会終了後の懇親会には、総会には大学の授業の関係で出席できなかった上畑新副理事長も駆けつけ、参加者がおのおの抱負を語り合い、和やかの懇親の場となりました。